東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の安全性を議論する新潟県の有識者会議「技術委員会」が16日、新潟市中央区であった。福島第一原発事故を起こした東電に原発を運転する「適格性」があるかについて、それがあると認めた原子力規制委員会の昨年末の判断について、委員の1人が「妥当ではない」と批判。規制委の事務局として、説明のために参加した原子力規制庁の反論に対し、委員が再反論する場面もあった。
規制委は昨年末、柏崎刈羽原発に対して事実上の運転禁止命令を解除した際、東電の適格性について「ないとする理由はない」と説明した。その根拠の一つとされたのが、柏崎刈羽原発の再稼働に向けて東電が守ることを求められた「七つの約束」(基本姿勢)への取り組み。「福島第一原発の廃炉を主体的に取り組み、やりきる覚悟とその実績を示す」ことなどで構成され、これらについての評価が根拠とされていた。
規制委のこうした判断について、元日本原子力研究開発機構研究員の岩井孝委員は、この日の技術委で批判した。東電が進める福島第一原発の廃炉について、格納容器内の燃料デブリの取り出しが遅れていると指摘、「実績を示す、としていることに反している」と訴えた。また今年2月に同原発で汚染水1.5トンが建屋外へ漏れ出した事故についても挙げ、「下請け任せにしていることが原因。廃炉を主体的に取り組むとした姿勢に反している。『リスク低減を図る』にも反する」と述べた。
さらに同原発の処理水の海洋放出についても、地元漁業者から反発があるとして、「廃炉を進めるにあたって関係者の『ご理解を得ながら取り組む』との姿勢に反する」と主張した。
これに対し規制庁は、燃料デブリの取り出しについて「当初計画通りに進捗(しんちょく)していないものもある一方で、目標が達成された課題も多くあり、総じて廃炉作業及びリスク低減が進捗している」と反論。汚染水漏れについては適格性を判断した期間の後だったとし、「考慮していない。ミスやトラブルをゼロにはできない」。処理水の海洋放出については「規制に直接的に関連するものではない」と説明した。
これを聞いた岩井氏は「適格性、と言うときには真摯(しんし)な対応が含まれる。『その通りですね』とは私は思わない」と再反論した。
この日の技術委では、能登半島地震を踏まえて柏崎刈羽原発での安全対策の追加を求める声が複数の委員から上がった。規制庁は「知見の収集を行っているところ。新たな知見が得られれば規制に採り入れるべきかを判断する」と述べた。【朝日新聞】