衆院島根1区補選が16日、告示される。選挙区内にある島根原発2号機(松江市)について、中国電力は8月の再稼働を目指す。1月の能登半島地震では、原発の安全性と避難計画の課題が浮き彫りになったが、補選では原発の再稼働の是非も争点の一つになりそうだ。
「そんなに急いで動かさなくてもいいのでは」。松江市中心部から車で約20分。島根原発近くで運送業を営む男性(54)は、ひっきりなしに原発構内へと向かう工事車両を横目で見ながら、そうつぶやいた。
島根原発では、再稼働に向けた2号機の安全対策工事が急ピッチで進む。そんななか能登半島地震が起き、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の周辺では多くの道路が寸断された。原発では放射能漏れなどの事態にはいたらなかったが、核燃料を冷やすための外部電源が一部喪失した。男性は「ここら辺も道路は狭く、落石も多い。住民の安全が確保されていない中で再稼働と言われても納得しづらい」。
今月4日、再稼働延期を求めて署名活動を続ける市民団体のメンバーが向かった先は、自民党から立候補予定の錦織功政氏(55)と、立憲民主党から立候補予定の亀井亜紀子氏(58)の松江市内の事務所。「再稼働に対する見解を明らかにしてください」「再稼働の延期に尽力してください」と記した要請書をそれぞれの秘書に手渡した。市民団体の共同代表を務める秋重幸邦・島根大名誉教授は、有権者が投票先を見極める上でも「候補者が態度を明確にすることが大事」と話す。
補選には、政治団体代表の佐々木信夫氏(85)も立候補を予定している。【朝日新聞】