国が新潟県、柏崎市、刈羽村に東京電力柏崎刈羽原発の再稼働への同意を要請したことなどに対し、立地自治体以外の新潟県内首長から「時期尚早」との発言が続いている。県内20市の首長でつくる県市長会の中でも、再稼働に対する考え方には温度差があるのが現状だ。再稼働の是非を判断する花角英世知事は今後、首長とコミュニケーションを図っていくとしており、どのような形で意見をくみ上げるか注目されている。
「少し国に前のめりの動きがみられると思う。『心配だ』という声が首長から聞こえてきているのも事実だ」。新潟県市長会会長を務める新発田市の二階堂馨市長は4月5日の記者会見で率直に語った。
市長会は2023年、水面下で各市長に再稼働への考えを聞き取った。関係者によると、慎重、容認、さまざまな意見があった。
その後、元日の能登半島地震で屋内退避の在り方や避難道路確保の問題がクローズアップされた。地震では新潟県も大きな被害を受けたが、復旧途上にある3月中旬、経済産業相が新潟県と柏崎市、刈羽村に再稼働同意を電話で要請。これをきっかけに首長からの発言が目立つようになった。
▽立地自治体は前向き
新潟市の中原八一市長は「県民が不安を持っている。今回の要請はやや早いと感じる」、上越市の中川幹太市長も「ちょっと早いのではないか」と、それぞれ記者会見の場で疑問を呈した。
長岡市は原発から半径5〜30キロ圏の避難準備区域(UPZ)に大部分が含まれる。県内全30市町村でつくる「原子力安全対策に関する研究会」の代表幹事でもある磯田達伸市長は3月下旬の記者会見で、複合災害時の避難の実効性などを挙げ「本当に大切な問題が積み残されている。(国や東電の)動きに違和感がある」と強調した。
一方、立地自治体は再稼働に前向きだ。
柏崎市の桜井雅浩市長は、原発の環境性能や作業員の雇用による経済効果を理由に「再稼働には意義がある」と強調。4月3日の記者会見でも、東電が再稼働に向けた最終検査のため、7号機の原子炉に核燃料を入れる燃料装填(そうてん)を始めることについて「予定通り進めてほしい」と述べた。
▽知事の調整いかに
新潟県の花角知事は4月3日の記者会見で「これから(再稼働の是非の)議論が進んでいく中で、首長とコミュニケーションを図っていきたい」と語った。
市町村の意見調整は広域自治体である県の役割の一つ。とりわけ花角知事は就任以来、市町村との良好な関係づくりを重視してきた。
ある県幹部は「知事も相当悩んでいるだろう。当然、『信を問う』前に首長から意見を聞く場をつくらなければならないが、枠組みもやり方も含め、ノープランなのが実情だ」と打ち明ける。
二階堂市長は4月5日の記者会見で「市長会(の首長の間で)も相当の温度差があるかもしれない。議論が煮詰まっているとは、とても思っていない」と受け止めを語った。
花角知事は毎年度、県内をブロックごとに分けて首長との懇談会を開いている。二階堂市長は当面、こうした場が意見交換の舞台になると見通す。「多くの首長は知事がどう考えているのかを見ている。今年は原発が議論の中心になるのではないかと想像している」と話した。【新潟日報】