日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)から半径30キロ圏に市内全域が含まれる日立市は27日、東海第2の重大事故に備えた広域避難計画を策定した。同日の市防災会議で計画案が原案通り了承された。避難手段は自家用車を原則とし、自家用車の利用が難しい人のための大型バスは、延べ約750台必要と試算した。
小川春樹市長は防災会議後、報道陣の取材に「一歩前進。まずは安堵(あんど)している」と話した。ただ、県が手配する45人乗り大型バスについては「運転士が不足する中、どれだけ確保できるのか」と不安をのぞかせ、「1自治体で実効性ある計画を作るのは限界がある。この計画で全てに対応できるかというと、難しいんじゃないか」と述べた。
県は県バス協会を通じて車両の確保を目指す考え。県の担当者は「まずは相手方の理解を得ることが大事で、まだ実務的な調整をできる段階ではない。確保できた台数に応じて運行体制を考えることになると思う」とした。
日立市では、東海第2から5キロ圏内で重大事故時に即時避難する予防的防護措置区域(PAZ)に約2万3500人が、30キロ圏内で屋内退避後、1週間程度の間に避難する緊急防護措置区域(UPZ)に約14万4500人が住む。
計画では市民の避難先を地区ごとに福島県内の17市町村に指定。原則として自家用車を使い、地区ごとに決められた経路で避難先に向かう。自家用車での避難が難しい住民は一時集合場所に徒歩などで向かい、大型バスで避難する。必要なバスの台数は市民アンケートの結果から試算した。
地区ごとの避難経路は、主に国道や県道などの幹線道路を指定。他の災害による道路損壊や渋滞に備え、海側や山側など複数の経路を例示し、状況に応じて指定の経路以外での避難も認める。地震や津波と原発事故が同時に起きる「複合災害」への対応では、身を守る行動を最優先とするよう求める。
27日の防災会議には、ライフラインや交通事業者らで構成する委員約40人が出席。市側が示した計画案に対し、委員からの質疑はなく、原案通り了承された。
小川市長は会議後の取材で、複合災害による道路寸断や家屋倒壊などで市民が計画通りに動けない事態に陥る可能性に触れ、「この計画で本当に大丈夫なのか予測できないところもある。さらに検証を重ね、実効性を高めていく必要がある」と語った。
東海第2の放射能漏れを伴う事故を想定した広域避難計画は、原発から30キロ圏内の14市町村に策定が義務付けられている。昨年12月末に策定した東海村に続き、日立市は7自治体目。
◆県が今月中に避難計画まとめる 「県立こども病院」知事会見で説明
医療機関の遅れ「コロナ対応も一因」
東海第2の事故に備えた避難計画を3月中に策定する県立こども病院=水戸市で
東海第2の事故に備えた避難計画を3月中に策定する県立こども病院=水戸市で
日本原子力発電東海第2原発(東海村)の重大事故に備えた避難計画が未策定だった県立こども病院(水戸市)が、3月中に計画をまとめることが分かった。大井川和彦知事が27日の定例会見で明らかにした。
県は、東海第2から半径30キロ圏内14市町村の医療機関や社会福祉施設について、あらかじめ避難計画を策定することとしているが、現状で策定済みは66・1%にとどまる。知事はこども病院について「課題だった避難先確保の難しさでは県内のさまざまな病院の協力を得られ、めどがついた」と説明した。
全体の策定状況の評価を問う質問には「私は時間ありきで考えていないので遅れているとか順調とかコメントできない」とした。そのうえで「福祉施設がだいたい7割できているのに対し、医療機関は4割くらい。これは過去数年間、コロナ禍でそれどころじゃなかったということも一つの原因ではないか」との見方を示した。
避難計画策定が必要となる施設は、入院病床を備えた医療機関、特別養護老人ホームや障害者施設など7種の社会福祉施設。大井川知事は22日の県議会予算特別委員会で、2月1日時点の状況として「医療機関114機関のうち50機関、社会福祉施設484施設のうち345施設が策定済みで、策定率は66・1%」と答弁した。【東京新聞】