東京電力柏崎刈羽原発について、来週前半にも斎藤健経済産業相が新潟県の花角英世知事に、再稼働の「地元同意」を求める方向となった。能登半島地震を受け、改めて避難の課題などが浮き彫りとなる中での政府要請。「なぜこのタイミングなのか」-。開会中の県議会に臨んでいる県議からは3月15日、反発の声が上がった。柏崎刈羽原発が立地する地元住民からは賛否の意見が聞かれた。
「国の対応はあまりにも乱暴だ。県民をなめている」。柏崎刈羽原発から半径30キロ圏内を選挙区とする自民党県連元幹事長の柄沢正三県議(69)は、取材に語気を強めた。
県議会最大会派の自民県議団にはベテランを中心に、テロ対策不備など不祥事が相次いだ東電への批判が根強い。
柄沢県議は「国は新潟県での再稼働を人ごとと思っているんだろう。あまりにもひどい」と切り捨てた。
別の自民県議は本県が能登半島地震の被災地であることを挙げ「まだ復旧の途上なのに、(国は)動きが早すぎる」と語った。
原子力規制委員会は2023年末、テロ対策不備を受けて柏崎刈羽原発に出していた事実上の運転禁止命令を解除した。自民県連幹部は「規制委が安全とお墨付きを出したから、準備に入ってほしいという段階になったのだろう」と受け止めつつ「県民はお墨付きだと思っていないのでは」とした。
県議会の国政野党系会派「未来にいがた」代表の大渕健県議(51)は能登半島地震を受け、原発事故時に被ばくを避ける屋内退避の在り方や避難方法に心配の声が高まっているとし、「この機会に花角知事は地域から課題や意見が出ていることを大臣に訴えればいい」と述べた。
非自民の無所属議員でつくる会派「リベラル新潟」代表の重川隆広県議(72)も「議論が深まっていない。原発立地県に対する姿勢として乱暴だ」と指摘した。
県庁内にも国の姿勢を疑問視する見方はある。県幹部の一人は「国からすれば当然の手続きなのかもしれないが、屋内退避の問題などがクローズアップされている中で、県民感情を刺激するだろう」と推測した。
斎藤経産相による花角知事への要請後には、経産省資源エネルギー庁トップが花角知事と面会する予定。日程は21日で調整中だ。県の2024年度当初予算案を審議する県議会は閉会しておらず、別の県幹部は「県の都合なんてお構いなしだ」とため息をついた。
地元住民のうち、将来的な廃炉を前提に再稼働に賛成する柏崎市のパート従業員の男性(73)は「国のエネルギー事情を考えると原発に頼るしかない。地震が起きても確実に避難ができるインフラの整備を同時に進めてほしい」と求めた。
一方、再稼働に反対する住民団体の共同代表を務める刈羽村の高桑千恵さん(78)は「能登半島地震を受けて、東電は安全対策を見直すべきなのに検討し尽くされていない。避難計画も実効性が見えない状況の中、地元に再稼働の同意要請はあり得ない」と強調した。【新潟日報】