福島復興に欠かせない第一原発の廃炉ですが、解決しなければならない課題がいくつも残されています。その1つが、溶け落ちた核燃料「燃料デブリ」の取り出しです。福島第一原発からお伝えします。
福島第一原発の事務所前です。日が落ちて、私がいる場所もすっかり暗くなってしまいましたが、原子炉建屋がある敷地内では煌々と明かりが灯り廃炉作業が昼夜を問わず続けられています。
その廃炉作業に欠かせないことの1つが処理水を溜めている巨大なタンクの撤去です。
満杯に近づいていた処理水を処分しタンクの撤去を進めるため、東京電力は、2023年8月から処理水を海水で薄めた上で海への放出を始め、今は2023年度4回目となる放出が行われています。
この放出により約1千基ある巨大なタンクのうち2023年度はタンク約30基分が、2024年度は約50基分が海へと放出される計画です。
原発の敷地内では少しずつ空になっていくタンクを解体する準備も進んでいて、早ければ2024年度から解体が始まる見通しです。
タンクの撤去によって空いた敷地には、溶け落ちた核燃料=燃料デブリの取り出しに向けた施設が建設される見通しです。
廃炉の最難関とも言われる「デブリの取り出し」は計画通り進むのか、試行錯誤が続いています。
1号機から3号機に約880トンあるとされる燃料デブリ。東京電力は2023年度中に2号機で試験的な取り出しを始める計画でしたが、ロボットの挿入口の堆積物を思うように取り除くことができず、計画の延期を決めました。
2024年10月までの「デブリの取り出し」を目指す中、先週ある動きが…。大量のデブリをどのように取り出すか検討している専門家チームは、その方法についての報告書をまとめたのです。
それが、従来検討していた2つの案を併用するというもの。空気中でロボットなどを使い燃料デブリを取り出す「気中工法」を軸に。燃料デブリの一部を充填剤で固めて掘削する「充填固化工法」を併用するのが「有力」としたのです。
■評価小委員会 更田豊志委員長
「結論は技術が一番成熟しているとみられる「気中工法」を基本として一部「充填(固化)工法」のいいところを取り入れた工法を考えていこうと。」
原発事故から13年。人類史上例を見ない困難を乗り越えられるのでしょうか。
廃炉は一歩一歩進んではいますが燃料デブリの取り出しという関門は、あまりにも難しいものなんだとも感じます。
ここからは経済産業省の木野正登さんとお伝えします。
木野さん、まず燃料デブリの取り出しについて現在の状況を教えてください。
■経済産業省 木野正登さん
「2号機から取り出す予定だが、ロボットアームの調整に時間がかかっている。秋までに少量のデブリを取り出す予定です。」
そうしたなか専門家チームは先日、2つの方法を併用してという案を示しましたこの方法というのはどういうものになるんでしょうか。
■木野さん
「建物全体を水に満たす冠水工法は今回採用されない。気中工法と充填固化工法を使う。充填固化工法は燃料デブリを充填剤で覆って、線量を下げながら取り出す方法です。」
これまでも様々な案でデブリを取り出す方法を探ってきましたが、この案は現実的な方法なんでしょうか。
■木野さん
「場所によってですが、組み合わせることで実施する。いままで検討されてきた方法でもあるので、現実的な方法です。」
事故から13年が経ちますが、この13年というのは廃炉を進めていくうえで、どういう13年だったのでしょうか。またこれから先、どういうものにしていきたいでしょうか。
■木野さん
「2023年8月から処理水の海洋放出が始まり、これは廃炉を進めていく上で絶対に必要な道です。一方、燃料デブリの取り出しを加速していく必要性があるので、早急に取り出していきたい。」
【福島中央テレビ】