福島第一原発の作業員が汚染水を浴びた問題で、東京電力は飛散した廃液の量が、発生当初に発表した量の数十倍にあたる「数リットル」だったと発表しました。情報の正確性に欠ける東京電力の対応に対し、福島県は原因の究明と正確な情報発信に責任をもって取り組むよう申し入れました。
県危機管理部・鈴木晶政策監「今回の情報公開においては内容の正確性や信頼性を欠く部分が見られたことから、その原因について調査すると共に、正確な情報発信に責任を持って取り組むこと」
東京電力に対し、強い口調で申し入れを行った県の担当者。
この問題は、25日、福島第一原発の汚染水を処理する施設で、放射性物質を含んだ廃液をためるタンクからホースが外れて作業員5人にかかったものです。そのうち、男性作業員2人に汚染が確認され、一時入院しました。
東京電力は当初、飛散した廃液は「100ミリリットル程度」と発表していましたが、その後の作業員などへの聞き取りを行った結果、その数十倍の「数リットルだった」と30日に発表しました。
さらに、当初「『1次下請け』の5人で作業していた」と発表していましたが、これについても「『3次下請け』だった」と訂正しました。
県は31日、廃炉に関する会議の中で、情報の正確性に欠く東京電力の対応に対し、原因究明と再発防止策を講じることや、正確な情報発信に責任をもって取り組むことなど3点を申し入れました。
東京電力の担当者「それぞれしっかり体制、対策を講じて対応してまいりたいと思います」
東京電力はこのように話し、一連の対応を謝罪しました。
発生後5日経ち訂正相次ぐ
【解説】
今回の問題の経緯は、10月25日、汚染水を処理する設備で、配管を洗浄する際、ホースが外れて、作業員5人が汚染水を浴びました。このうち2人が、病院に搬送され入院、28日に退院しました。
そして30日、問題が起きてから、5日経って、東京電力は公表した内容をいくつか訂正しました。
1つは、飛び散った汚染水の量です。当初は100ミリリットル程度としていましたが、これを数十倍の数リットルに訂正しました。ただ、正確な量は、いまも公表されていません。
そして、汚染水を浴びた作業員は、当初は「1次下請けの1社」としていましたが「3次下請けの3社」と訂正しました。
どちらも大切な情報ですが、なぜ、このような訂正が相次いだのでしょうか。
飛び散った汚染水の量について、東電は当初、床に落ちた水滴の量から、推定したということですが、聞き取りの結果、浴びたものも含めれば、数リットルになると判断したとしています。
ただ、速報とはいえ、具体的な数値を出して、実際よりもはるかに少ない量を公表したことで、事態を矮小化しようとしたのではと捉えられかねません。
何よりも、厳しく管理されているはずの原発構内で、どこの誰が、どのくらいの被害にあったのかという問題の本質的な部分について、正確な情報が公表されなかったことは非常に重いことだと思います。
東電は11月2日から、3回目の処理水放出を行う予定です。「一度のミスでも取り返しのつかない事態になる」と、漁業関係者が指摘する処理水の放出の直前のトラブルだけに、重く受け止めるべきだと思います。
【テレビユー福島】