山口県上関町で使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設が検討されている問題で、村岡嗣政知事は13日の定例会見で、中国電力による建設に向けた調査に伴って上関町と県が受け取れる国の交付金について「県が申請するとか活用するとかは考えていない」と述べた。施設建設の賛否については「賛成も反対もない」という従来の見解を繰り返した。
原発や中間貯蔵施設などがある地域(電源立地地域)を対象とした国の交付金の制度で、立地可能性調査が始まった年度から、調査地を含む市町村と都道府県に、「電源立地等初期対策交付金」として年間で最大計1億4千万円が交付される。
村岡知事は会見で、調査に伴う交付金の「取り扱い」を問われ、「上関町が自ら手を挙げて進めていること。町の方で取り組まれることだと思う」と述べ、県としてこの交付金の申請や受け取りをしない方針を示した。
上関町周辺の自治体の首長から施設をめぐる懸念を表明する発言が相次いでいることに対して「原発の関連する施設が近隣に立地するとなった時、不安が先に立つのは当然のこと。進めようとするのであれば、中国電力によほど丁寧な説明を周辺地域にもやって頂かなければならない」と指摘した。
知事の「同意」は、法令上は建設の要件でないが、円滑に進めるためには必須とみられる。村岡知事は、同意するかどうかを判断する際、「周辺自治体の理解も大変重要な要素」との認識を示した。
一方で、どこまでを「周辺自治体」と見るか、との質問に「(使用済み核燃料が)どういうルートで運ばれるのかによっても関係する自治体は変わってくる。現時点で確定的に言える材料はない」と述べた。
また、今後の中電の調査で町内の用地が「適地」と判断されれば、「次のステップ」に向けた具体的な説明が想定される、と指摘した上で、「そうした説明を受けてから判断すべきだと思っている。現時点ではまったく情報も無く、賛成も反対も言えるような状態ではない」と強調した。(山野拓郎)
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開会中の山口県上関町議会9月定例会で13日、一般質問があり、使用済み核燃料の中間貯蔵施設をめぐる質問が相次いだ。建設に向けた中国電力の調査を受け入れた西哲夫町長は、反対派の議員の質問に「受け入れを撤回するつもりはない」と述べた。
中間貯蔵施設の計画に賛成の立場の4人、反対の3人が質問に立ち、いずれもこの問題について尋ねた。
反対の立場の山戸孝議員が「調査容認を判断するまでの期間が短すぎた。いったん撤回してはどうか」と質問した。
西町長は撤回を否定し、「調査は適地かどうかを判断するために行う。次の段階までに時間があり、その間に東海第二(原発の中間貯蔵施設)を見学するなどして知識を高めて、皆で議論して判断したい」と答えた。
周辺自治体の首長から説明を求める声が上がっていることについては「今は議会中で首長と会えていない。8月7日に柳井市や周防大島町に(中国電力から調査の)申し入れがあったことはお伝えし、31日にも柳井広域圏の会合で調査受け入れとなった結果はお伝えした」と答弁した。
同じく計画に反対する清水康博議員から「調査受け入れ表明後に上がった周辺自治体の首長・住民の(批判などの)声を町長はどう受け止め、対応するか」と問われると、西町長は「基本的に周辺市町の理解活動は、事業者及び国が中心となって行っていただけるものと考えている。それを確認していきたい」と答えた。
賛成の立場の古泉直紀議員は、施設の安全性についての認識をただした。西町長は「(使用済み核燃料を保管する)キャスクは東日本大震災の時でも問題はなかった。視察してみると安全性は想像以上で、ぜひ見ていただきたい」と答えた。
一般質問の途中、傍聴席から「町民だけの問題じゃない」などの不規則発言があり、西町長が「答えづらい」と答弁を一時中断した。岩木和美議長が注意した後も発言を続けた1人を退場させる場面もあった。
傍聴した同町祝島の山田建夫さん(76)は「この問題はゼロから話し合うべきことで、決めてから話し合う問題ではない」と話した。
【朝日新聞】