不祥事が後を絶たない関西電力。その会長には財界の大物が就いている。元経団連会長で東レの社長と会長も歴任した榊原定征氏だ。社内風土の改革を託され2020年6月に就任したが、ここまでは期待に応えたとは言い難い。経営陣が厳しく追及された6月28日の定時株主総会では、発言の機会さえなかった榊原氏。4年目にして関電を刷新できるのか。
「今や不正のデパート。役員が謝罪する時でさえ別の違法行為が進行している救いがたい企業風土だ」。大阪市で開かれた株主総会で株主の一人が、不祥事が相次いで発覚した関電を厳しく批判した。
会社側は冒頭、森望社長が「コンプライアンス(法令順守)に不適切な事案が起こり、多大なご迷惑とご心配をおかけした。深くおわび申し上げる」と述べ、役員一同が頭を下げた。森社長の隣に座った榊原氏もその一人だったが、最後まで株主の質問に答えることも自ら発言を求めることも無かった。
14~18年に経団連会長を務めた榊原氏が関電に迎えられたきっかけも不祥事だった。原発が立地する福井県高浜町の元助役から、総額約3億7000万円相当の金品を元役員ら計83人が受け取っていた問題が19年に発覚。厳しい批判を浴び、当時の会長と社長が辞任に追い込まれた。
この反省を踏まえ、関電は20年6月に指名委員会等設置会社に移行した。経営と執行を分離し社外取締役の権限を強める方式で、企業統治(ガバナンス)を強化する狙いがあった。その社外取締役の一人として、財界トップも務めた榊原氏を会長に迎えたのだ。
就任直後の20年9月、毎日新聞のインタビューに「取締役会の議長として、社内の問題を把握できる体制が動き出した」と述べていた。実は、その時点で別の不祥事がうごめいていた。【関西電力】