東京電力福島第1原発事故の避難者らが国などに損害賠償を求めた集団訴訟で、国の賠償責任を否定する統一判断を示した最高裁判決から17日で1年。同判決後、全国の後続訴訟では同様に国の責任を否定する判決が続いている。原告らは16日、最高裁前などで街頭行動を行い「原発事故を二度と起こさないためにも、最高裁判決を覆したい」と改めて国の責任を訴えた。
最高裁西門前で行われた全国の各集団訴訟の原告団による街頭活動には約80人が参加。「最高裁の判断を改めることができるのは最高裁」などと声を張り上げた。その中に、福島(生業(なりわい))訴訟原告団の団長を務める中島孝さん(67)の姿があった。
一審と二審で国の責任を認める判決を得ていた中島さんは昨年、最高裁判決でどん底に突き落とされた。怒りや悔しさを力に変えてこの1年、後続の訴訟の応援に駆けつけるなど活動を続けてきた。
昨年12月、集団訴訟でこれまでの賠償基準を上回る東電への賠償命令が相次いだことを受け、原子力損害賠償紛争審査会は中間指針を見直す第5次追補を決定した。「声を上げ続ける大切さを改めて感じた」。中島さんは一定の手応えも感じている。一方で、原発の60年超運転を可能にする法律が成立するなど、原発に対する国の考えの甘さを痛感しており、「あの恐怖を繰り返さないため、責任の所在を明らかにするまで我々は屈さない」と、活動継続への強い思いをにじませた。
「帳尻合わせ」指摘
原発避難者訴訟の主な司法判断は【表】の通り。最高裁判決後は国の責任を否定する判決が続いている。原子力法に詳しい下山憲治早大教授(行政法)は、2021年3月の一審で国の賠償責任が認められたものの、最高裁判決後の今年3月に一転して国の責任を否定したいわき市民訴訟控訴審判決について、「最高裁と帳尻を合わせようと取り繕ったために論理が飛躍している」と疑問を呈する。
その上で、原発建屋の水密化や高所配置など、最高裁判決のケースとは異なる事故回避措置が争点となっている訴訟については「最高裁と判断に相違があってもおかしくない。独立した裁判官としての判断を期待したい」と語った。【福島民友新聞】