福島県の福島大と海洋研究開発機構などの研究チームは、福島第一原発事故で放出された放射性物質の一種であるストロンチウム90について、1000兆分の1ミリ・グラム単位の超微量な量でも正確に測定できる技術を開発したと発表した。同大の高貝慶隆教授(分析化学)は「ごく微量でも実際に測ることで不安の解消につながる」と話す。
ストロンチウム90は物質を通り抜ける力が弱い放射線のベータ線を出す性質があり、物質を通り抜ける力が強いガンマ線も出すセシウム137に比べ、測定が難しい。事故で放出された量はセシウム137の約100分の1と推定されており、食品の安全検査では、セシウム137を測定することで基準値に収まっているかを判断している。ただし、ストロンチウム90はカルシウムに似て骨に蓄積しやすく、放射能が自然に半分に減る期間「半減期」も28・8年で長い。
研究チームは試料をイオン化した上で、磁力の力で振り分けて調べる「表面電離型質量分析装置」を用い、従来は1~100グラムの試料が必要なのを1ミリ・グラムで済むようにした。小動物や魚の歯や骨にわずかに蓄積したストロンチウム90の測定が可能といい、現在、野生のネズミやモグラなどで調査を進めているという。将来的には人体での量を調べる予定だ。
研究結果は、アメリカ化学会の専門誌のオンライン版で掲載された。
【読売新聞】