東京電力は27日、福島第1原発事故の国の賠償基準「中間指針」見直しに伴い、持病があった人に最大で月5万円を増額して支払うことなどを盛り込んだ精神的損害の追加賠償の基準を発表した。持病のある家族らの介護をした人や家族との別居生活を余儀なくされた人らも含め、支払額を拡充した。指針では具体的な金額は示されず、東電の具体的な対応が焦点となっていた。一方、原発事故から12年超が経過する中、損害の証明を円滑に進められるかが課題となる。
新たに賠償が増額となった対象の内容は【表】の通り。原則として賠償の対象期間は原発事故発生後、実際に損害を受けた間となる。期間の終期は自宅があった地域に出された避難指示の種類などによって異なる。
透析患者で事故前と同じ治療を受けることが妨げられた人は月額5万円を増額し、事故から半年間を対象とする。重度または中等度の持病があった人や、それらの人の介護を行っていた人は月額3万円を受け取れる。避難生活に伴い、18歳以下の子どもと親が別離を余儀なくされた家庭は子どもの年齢に応じて月1万~3万円とする。指定期間内に避難所を6回以上移動した人には、一時金として5万円を一括して支払う。
この他、原発事故当時に居住制限区域などに暮らしていた人を親とし、事故後(2017年3月末まで)に生まれて親と避難生活を送った人に月3万円を支払う。
これらに該当しない場合でも個別に相談を受け、避難生活などを送る上で同程度以上の困難さがあったと認められる場合は対応する。
東電は手続きの際に増額対象者であることを証明する書類などの提出を求める方針。ただ、原発事故発生から12年が経過していることに加え、緊急の避難を余儀なくされたことで申請に必要な資料などをそろえるのが難しい事例の多発が想定される。東電は申請者側の負担を可能な限り減らす方針だが、担当者は「具体的な必要書類などは今後詳細を詰める」と述べるにとどめる。今後は被災者の個別の事情や損害に応じた柔軟な対応ができるかが焦点となる。【福島民報】