政府の規制改革推進会議の有識者作業部会が「所有権分離」を求める提言の発端になった大手電力による不正閲覧。情報を顧客獲得の営業活動に悪用していた関西電力では、かつて同僚だった送配電側の社員から関電側に情報を提供したとみられる事例も存在する。大手電力は所有権分離に抵抗しているが、ハード面では情報遮断が徹底されず、組織面でも人事交流による結びつきの強さが残り、送配電子会社の中立性に対する疑念は深まっている。
電力小売り事業の完全自由化を受け、関電も子会社として関西電力送配電を設立した。ところが関電と関西送配電は分離前の同じシステムを共有し、両社間の情報遮断が不十分だったことが不正閲覧のハード面の原因となった。
関西送配電は今後について「システムの完全分離を着実に推進する」とする。それでも今、資本関係も含めて大手電力から送配電子会社を切り離す所有権分離の主張が勢いを強めている理由のひとつに、親子会社間の人事による結びつきの強さがある。
関西送配電によると、新電力を含む電力小売り事業者や発電事業者との情報連絡を担当する部署から、関電の小売り事業や電源開発計画を担当する部署への異動は、社内規定で禁止している。ただ、社員調査によると、関電から送配電に異動した1人が「(関電時代の)同僚から新電力顧客の設備情報について問い合わせがあり、答えたことがある」と証言。電気事業法が禁止する「適正な競争関係を阻害する」行為に該当するおそれがある。
関電の森望社長は先月24日の記者会見で「今すぐに異動への制約を変更する判断はしていない」と述べつつ、人事異動の制限強化の必要性も含めて検討する考えを示している。同じグループ内に小売り部門と送配電部門がとどまることに厳しい目が向けられる中、中立性を確保するための組織面での対策強化が求められる。【産経新聞】