東京電力が31日に示した福島第1原発事故に伴う追加賠償の基準では、避難を余儀なくされた人らのうち要介護状態や身体・精神的障害のある人、その介護者への賠償額を月額3万円増やすことも盛り込まれた。「自主的避難等対象区域」の住民への賠償も8万円増額される。
ほかに増額の対象となるのは、乳幼児の世話を日常的にしていた人で、子どもの年齢に応じて月額1~3万円増やす。原発事故当時に妊娠していた人には一時金30万円を追加で支払う。
原子力損害賠償紛争審査会がまとめた中間指針第5次追補に記された増額理由のうち、重度の障害があることや、避難所の移動回数が多かったことなど5項目については、具体的な金額が示されなかった。東電は「3月を目標に可能な限り基準を示す」としている。
原発事故から12年がたつ中、東電は被害者の生活環境の変化に対応していく考えで、亡くなった人も賠償の対象になる可能性があるとしている。この場合、亡くなった人の相続などで権利を引き継いだ人に賠償金を支払うことを検討している。引っ越したり、世帯が分割・独立したりした場合にも対応する方針だ。東電は「世帯が分かれていることを前提に、体制づくりを進めていく」としている。
賠償請求に当たっては、従来の請求書を用いた方法のほか、一部をウェブサイトから受け付けられるよう準備を進める。東電によると、被害者の負担を軽減する取り組みの一環で、インターネットを活用した請求受け付けは初めてとなる。
東電は今回の追加賠償の基準に関し、問い合わせに対応できるよう相談専用ダイヤル(フリーダイヤル0120・926・470)を開設した。賠償対象区域や損害額を紹介する専用ホームページも作った。
31日に県庁で記者会見した内田正明福島復興本社副代表らは「今回の追加賠償の対象は148万人と大きな人数のため、早期に確実に賠償金を支払うことを目的に社内体制の整備や、簡便な請求方法も含めて取り組んでいきたい」と述べた。【福島民友新聞】