福島県内の高校生が、東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出について考える「ふくしま浜通り高校生会議」の報告会は9日、Jヴィレッジ(楢葉・広野町)で開かれた。生徒は立場や人によって考えが異なるとして、互いに意見を紡ぎ合う必要性を訴え、「福島だけの問題ではなく、全国で議論すべき」と問題提起した。
約120人が参加した。広野町のNPO法人ハッピーロードネットの西本由美子理事長があいさつした後、生徒は「情報」「教育」「正しさ」の班ごとに発表した。正しさの班は東電、経済産業省、県漁連の考えが異なるとして、他者の意見に耳を傾ける必要性を説いた。生徒が処理水や海水、魚の役になり、海洋放出を取り巻く問題を寸劇で披露した。
「処理水から考える福島の未来」をテーマにパネルディスカッションも展開した。昨年11月の会議で講師を務めた県漁連の野崎哲会長が発した「紡ぎ合う」との言葉が印象に残っているとの声が相次いだ。
石上琴乃さん(ふたば未来学園高1年)は「賛成、反対に二極化していると思っていたが、実際は違っていて意外だった」、武田隼輔さん(安積高2年)は「紡ぎ合いは妥協ではなく、一つの意見を強く形成していくとの意味が込められていると感じた」と発表した。
会場で高校生の発表を傍聴した各省や団体、報道の関係者が感想を述べた。最後に生徒を代表して神谷菜月さん(磐城高1年)がお礼のあいさつをした。福島民報社から円谷真路いわき支社長が出席した。
ハッピーロードネットの主催、福島民報社の後援。公募で集まった高校生12人は昨年11月から県漁連や東電、大学、国、マスコミの担当者の話を聞き、議論を重ねてきた。【福島民報】