東京電力福島第一原発事故以降の原子力政策の転換は、わずか50分間の非公開の会議で決まった。国民に広く意見を聞くことを後回しにして、議論の場となった経済産業省の有識者会議でも、原発に否定的な意見はほぼ聞き入れられずに性急さが際立った。
午後3時前、議論を終えた会議室に代表取材を担う報道陣が入っていく。多くの記者は別室で待機し、音声がスピーカーから聞こえてくる。岸田文雄首相は脱炭素社会の実現に向けた取り組みについて「経済、社会全体の大変革。技術進歩次第で状況が変わる」と重要性を強調した。
最後に触れたのが、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分。選定に向けた手続きについて「実施地域の拡大を目指し、政府をあげて取り組んでいく」と述べた。関係する閣僚会議を23日に5年ぶりに開くことになった。
会議後、記者会見した西村康稔経産相は、議論の拙速さについて「原子力に否定的な意見の人からもヒアリングをした。さまざまな意見を受けてとりまとめた」と説明。福島事故の被災者から理解を得られるのかを問われると「福島の現状に寄り添いながらエネルギー政策を進めたい」とする一方、「エネルギー情勢が急変しており、安定供給する責任がある。原子力を含め、あらゆる選択肢を追求する」と述べた。
【東京新聞】