東北電力は21日、女川原子力発電所(宮城県女川町)2号機の安全対策工事を報道陣に公開した。新型コロナウイルスで3年9カ月ぶりの公開となったが、安全工事の完了は来年11月で、「計画通りの進(しん)捗(ちょく)状況」(同社)という。令和6年にも予定されている再稼働がいよいよ現実味を帯びてきた。
2号機は2年2月、原子炉設置変更許可申請(基本設計)が許可され、昨年12月には工事計画認可申請(詳細設計)が認可された。これに加え、保安規定変更認可申請(体制、運転管理)が認可されれば、国による一連の審査が終了する運びだ。
2号機が立地する牡鹿半島は、平成23年3月の東日本大震災で半島全体が1メートル沈下。原発自体は当時、海抜14・8メートルに建っていたが、13・8メートルとなり、震災で押し寄せた13メートルの津波の直接被害は受けなかった。
この津波被害を教訓に、揺れの強さが567・5ガルだった東日本大震災を超える1000ガルの地震にも対応できるよう、防潮堤の高さを29メートルに設定。構造上も、漂流物がぶつかっても壊れない防護工、津波を浸入させない鋼製遮水壁、それらを支える鋼管杭の3重構造にした。鋼管杭は最深で岩盤までの20メートルまで埋設されている。
また、大規模な原子力災害が発生した場合の現地対策本部となる緊急時対策所を新設した。地下2階・地上2階で、壁の厚みは最大2・2メートル。〝有事〟の際は、200人が最大1週間にわたり、早期収束に向けた作業を行うことができる。また、2号機の原子炉格納容器の中の圧力が高くなり、ベント(排出)の必要が出た場合は、空気圧で外部と遮断して安全に作業を進める。
東日本大震災では、津波による電源喪失で被害が広がった。女川原発では外部から5つの送電線で発電所への電源を確保しているが、さらに海抜60メートルにガスタービン発電機と電源車を配置した。これで2号機を安全に運用する電力が得られるという。
女川原発の大平一樹所長代理は「安全対策に終わりはないが、再稼働に向けて見通しが立った。再稼働には国民の理解が必要なので、丁寧に説明していきたい」と話した。【産経新聞】