東京電力福島第一原発の事故で愛媛県に避難した住民らが国に損害賠償を求めた集団訴訟で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は16日、双方の意見を聞く弁論を開いた。先に弁論があった千葉、群馬、福島の3訴訟と合わせ、最高裁に係属中の4訴訟が全て結審した。第二小法廷は今夏の判決で、国の責任について統一判断を示す見通しだ。
「長女は3歳になると小松菜を抜き、草むしりも種まきも、何でも手伝うようになりました」。この日の弁論で、原告の渡部寛志さん(43)は福島県南相馬市小高区で専業農家だったころの生活を振り返った。
事故後、妻、2人の娘と愛媛県に避難したが、将来の生活や帰還について妻と意見がぶつかるようになり、2019年に離婚。家族は離ればなれになり、渡部さんと次女は、愛媛県松前町と南相馬市を行き来しながら暮らしている。
最高裁が国の責任を認めれば、「国や社会の仕組みに多くの人々が目を向け、人の痛みを放置しない社会につながる」。渡部さんはそう述べ、「今の私たちにできることは皆さんの心を信じることだけです」と裁判官に訴えかけた。
国側は他の3訴訟と同じく、「事故は予見できず、仮に東電に対策をとらせても事故は防げなかった」と反論した。【朝日新聞】