■改めて反対強調
東京電力福島第1原発の処理水を巡り、政府が海洋放出の方針を決めてから13日で1年を迎えた。茨城沿海地区漁業協同組合連合会の飛田正美会長(74)は12日、茨城新聞の取材に「政府や東電の対応策は具体性に欠け、この1年間、大きな進展はなかったと認識している。反対に変わりはない」と改めて強調した。
政府や東電は、安全性の確保と風評被害対策を徹底するとして、県内を含む関係県の漁業団体や自治体に理解を求めてきた。飛田会長は「将来の漁業への不安を払拭するものではない」と話し、政府側との溝が少しも埋まっていない状況を示した。
福島第1原発の敷地内に貯蔵される処理水は、2月時点で129万トン。廃炉を進めるには原子炉内から除去した核燃料(デブリ)や廃棄物の保管場所の確保が必要なため、政府や東電は「(放出は)福島の復興のために必要」と強調する。漁業継続に向けた支援や風評被害に対応する「超大型の基金創設」なども提示してきた。
飛田会長は全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長らと共に5日、岸田文雄首相と面会。岸田首相に「後継者問題にしっかりした姿勢で取り組んでもらいたい」と要望し、「検討する」などと返答があったと話した。
経済産業省資源エネルギー庁の福田光紀・原子力発電所事故収束対応室長は12日、取材に対し、「地元の理解なしには海洋放出しない」とする政府の立場を改めて強調。その上で「丁寧に説明を続けたい」と話し、引き続き漁業者らに理解を求める考えを示した。【茨城新聞】