首都圏の電力需給が逼迫した状況は23日昼前、政府の「警報」解除で一段落した。電力需要を下げる節電が夕方のピーク前に目標を上回ったことと、民間企業の自家発電で供給力をカバーできたことが、綱渡りの電力供給を支えた。
政府と東京電力は21日夜から、想定される電力需要の1割削減が必要として節電を呼び掛けた。ただ目標の達成には、翌日午後3時以降までかかった。送配電を担う東電パワーグリッドの田山幸彦系統運用部長は「前日にお願いしたこともあり、(各企業が)朝来て対応し午後から効果が出た」と見解を示した。
22日午後3時前には萩生田光一経済産業相が、臨時会見で停電への危機感を強調。その陰で、東電や経産省の担当者が電力を大量に使う企業に電話で個別に要請した。鉄スクラップを電気で溶かして鋼材を造る東京製鉄(東京都千代田区)は、宇都宮市の工場を22日朝まで稼働していたが、昼以降は停止。前日夜は、東電から生産停止の要請はなかったという。
石炭など燃料を確保して自前で発電している製造業者には、たき増しも個別に要請した。製鉄大手のJFEスチール(千代田区)は通常時から製鉄の過程で発生するガスを使って発電しており、22日は、川崎市と千葉市の製鉄所で発電設備をフル稼働させた。
政府は21日午後8時に警報を出したが、より早ければ節電効果は翌日午前中から出た可能性がある。発令は需給想定を踏まえて午後6時をめどに判断する仕組みだった。経産省資源エネルギー庁の小川要電力基盤整備課長は「2時間あまり遅れた。警報にはかなりの確度を求められるが、逼迫する状況を伝える必要があるかもしれない」と述べ、発令までの経過を検証する方針を示した。【東京新聞】