日本原子力発電東海第二原発(東海村)の運転差し止めを命じた水戸地裁判決から一年を迎えるのを前に、判決の意義を振り返る集会が六日、村産業・情報プラザ「アイヴィル」であった。差し止め訴訟原告弁護団の尾池誠司弁護士が「水戸地裁判決の意義」をテーマに講演し、約五十人が耳を傾けた。
昨年三月十八日の地裁判決は、原発の重大事故に備えた広域避難計画など防災体制の不備を理由に運転を差し止めている。尾池弁護士は、判決が重視した「深層防護」の考え方について説明した。
深層防護は、国際原子力機関(IAEA)が示す原発の安全確保の基本思想で、事故前後にわたる五段階の対策のうち一つが機能しなくても次のレベルの対策で防ぐ−というもの。尾池弁護士は、判決が避難計画を「第五レベル」の対策と明確に位置付け、その実効性確保が原発稼働の前提になるとしたことを「画期的」と評価し、「控訴審でもこの考え方を取り入れてもらいたい」と求めた。
集会の冒頭、主催者の田村武夫さんは、ウクライナに侵攻したロシア軍による原発施設への攻撃について「原発に攻撃してはいけないという国際社会のルールに違反したもの」と非難。国内の原発に関しても「防衛上危ない立地であり、廃炉に向け英知を結集すべきだ」と訴えた。
この日の集会は、二人の犠牲者を出した核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」の臨界事故(一九九九年)を風化させないようにと毎年九月に開かれている「9・30茨城集会」の実行委員会が臨時に企画した。【東京新聞】