核融合関連の技術開発に取り組む京都大発のベンチャー、京都フュージョニアリング(KF社、東京)は2日までに、核融合発電の実証実験プラントの建設を計画していることを明らかにした。令和5年中にも着工し、核融合反応で生じたエネルギーを発電用に転換する技術開発を進める。同社によると、核融合を想定した発電プロセスの実証施設は世界でも例がないという。
核融合は水素などの軽い原子核どうしが融合して新しい原子核になる反応で、太陽など恒星の中心部で生み出される膨大なエネルギーの源。発電にあたり温室効果ガスや、高レベル放射性廃棄物を排出しないことから、エネルギー問題や環境問題の解決につながるとして期待がかかる。
ただ、核融合炉内の反応で生み出されるエネルギーはそのままでは発電に使えず、転換には特有の技術が必要とされる。
計画するプラントでは、核融合反応でエネルギーが放出される状況を疑似的に再現し、同社が開発する装置で熱エネルギーに変換。さらに発電装置を駆動することで、実際に電気を起こす。プラントは十数メートル四方に収まる規模で、想定している発電能力も数十キロワットとごく小規模という。
核融合発電をめぐっては、現在、実用化できる規模の反応を安定的に維持するための開発競争が繰り広げられている。KF社は、こうした技術的ハードルが近い将来に克服されることを見越し、さらにその先の技術を確立させることでスムーズな実用化につなげる。長尾昂社長は「核融合発電を実用化するにあたって将来、避けては通れない部分。知見を重ねて技術的に先行したい」という。
同社は2日、三井住友銀行や三菱UFJ銀行といった大手金融機関やベンチャーキャピタルから総額約20億円の資金を調達すると発表。技術開発の加速や人員体制の強化などに充てるとしている。
プラントは来年中の着工を目指し、現在、建設候補地の検討を進めている。実証プラントに設置する装置の製造は国内のメーカーに依頼する方針といい、国内で技術やノウハウを蓄積することで、将来的な国際的競争力も確保する。【産経新聞】