2021年、南日本新聞の社会面で注目された鹿児島県内のニュースを、取材ノートを基に振り返る。
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九州電力は10月14日、川内原発1、2号機(薩摩川内市)で、法定の40年を超える運転延長申請に必要な特別点検を実施すると発表した。4日後には1号機で着手し、2号機も来年2月下旬に始める。九電は「延長を決めたものではない」としているが、「40年ルール」を棚上げした老朽原発の長期利用が一気に現実味を帯びた。
東京電力福島第1原発事故の教訓から生まれた「40年ルール」は、原子力規制委員会が認めれば、最長20年間延長が可能になる。あくまで例外措置だが、関西電力高浜原発1、2号機(福井県)など4基の運転延長が認可され、形骸化しているのが現状だ。
川内1、2号機は2024年7月、25年11月に運転40年の期限を迎え、延長するには期限の1年前までに規制委への申請が必要。九電はテロ対策施設などの安全対策に総額4000億円以上を投じており、費用対効果の面からも40年で廃炉にするとは考えにくい。
さらに、脱炭素社会実現に向け、政府が10月に閣議決定したエネルギー基本計画も追い風になった。原発を脱炭素に欠かせない「重要なベースロード電源」と位置付け、原発重視の方針を維持した。延長申請は確実とみていい。
九電が特別点検実施を発表した10月14日は衆院の解散当日だった。衆院選の期間中、原発が立地する鹿児島3区の候補者が、原発の延長問題に言及することがなかったのには首をひねった。有権者に賛否ある問題は、あえて争点にしない思惑が透けた。
延長問題を巡って塩田康一知事は賛否を明らかにしていない。判断の場としているのが川内原発の安全性を検証する専門委員会(12人)だ。昨年の知事選公約で原子力政策に批判的な学識経験者を委員会に加えると明記した。今月23日、新委員4人を追加した。
知事は「批判的な学識者を複数追加した」と言うが、どの委員が批判的かは明らかにせず、早期の委員見直しを求めていた反原発団体は「批判的な専門家は1人だけだ」と反発した。
1号機の運転延長申請の期限まで2年を切った。特別点検で九電は1号機のデータサンプル採取を終えており、申請を前倒しする可能性もあり得る。専門委員会は検証の入り口に立ったばかり。九電の動きに後れをとらぬよう十分な議論を重ねられるかが問われている。
【南日本新聞】