東京電力福島第1原発事故で強制起訴された勝俣恒久元会長(81)ら3人は、東電の株主からも津波対策を怠り巨額の損失を発生させたとして、東京地裁に訴訟を起こされた。 今年7月に行われた尋問では対策の必要性をめぐり、3人は「報告がなかった」「知らなかった」と繰り返した。
訴訟で大きな争点となった日本海溝沿いでマグニチュード8クラスの大地震が起きる可能性を指摘した政府機関の「長期評価」について、原子力部門で長年勤務した武藤栄元副社長(71)は「よく分からないので、専門家に聞くしかなかった」と主張。事故前に電力会社の関係者が過半を占める土木学会の部会に検討を依頼していたとして、津波対策をしなかった正当性を訴えた。太平洋側に原発を持つ他の事業者の対策は「知らなかった」と強調した。 原子力担当だった武黒一郎元副社長(75)も、津波対策は「部下から進言はなかった」と釈明。「(事故に至る)全電源喪失は可能性が非常に低かった。(備えは)許されるレベルだと思っていた」と振り返った。
「安全最優先の方針だった」と語ったのは勝俣元会長。だが、津波の想定見直しは「説明を受けていない」、長期評価を伝える新聞報道は「記事を見たことない」などと述べるにとどまった。「津波によって大事故になるという認識はなかった。情報を上げろとは言わなかった」とも話し、関心の乏しさがあらわになった。訴訟は今月中に結審する。【NHK】