東京電力福島第一原発事故で、愛媛県への避難者が国と東電に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が29日、高松高裁であった。神山隆一裁判長は、一審・松山地裁判決と同じく、国と東電の責任を認定。避難指示解除準備区域に住んでいた避難者について「ふるさと喪失慰謝料」も認めた。
原発事故による避難者が国と東電を訴えた集団訴訟の控訴審判決は、今回が4件目。国の賠償責任を認めた判決は、昨年9月の仙台高裁、今年2月の東京高裁に続いて3件目となった。
裁判では、政府の「地震調査研究推進本部」が2002年7月末に公表した地震予測「長期評価」を元に、国や東電が原発に被害をもたらす津波の発生を予想できたか▽長期評価に基づいて対策をしていれば、原発事故を回避できたか――が主な争点だった。
19年3月の一審・松山地裁判決は、長期評価について「多数の専門家の検証を踏まえた客観的・合理的な知見」と認定。国が東電に津波評価を試算させていれば、東日本大震災と同規模の地震による津波を予想でき、原発事故までに浸水対策を講じられたとした。その上で、国が規制権限を行使しなかったことは「許容される限度を逸脱し、著しく合理性を欠く」とし、国の賠償責任を認めていた。【朝日新聞】