東京電力福島第一原発では2011年3月の事故発生当初、原子炉格納容器の破裂を回避するため、炉内にたまった高濃度の放射性物質を含む蒸気を外部に放出するベント(排気)が実施された。1号機のベントで使われた配管は、雨水対策や建屋カバー建設の邪魔となり、撤去に向けた作業がようやく始まった。内部が高濃度に汚染された配管をどのように撤去するのか。その現場を報告する。
事故発生当初のベントで高濃度に汚染された配管の撤去に向け、準備が進む現場は、水素爆発で最上階が大破した1号機(右側)と爆発を逃れた2号機の間にある=2021年10月11日、福島県大熊町で、本社ヘリ「おおづる」から
ベント配管は、1号機と2号機の間にある排気筒から延びる太い主排気ダクトに沿うように設置されている。直径30センチほどで、内部には高濃度の放射性物質が付着し、曲がった部分はその量が多いとみられる。
2号機はベント失敗が確定的だが、配管の汚染は、1号機のベントガスが逆流したからだとされる。
配管内に、汚染水がたまっている可能性がある。切断部の前後に発泡ウレタンを注入して防水し、ウレタンごと切断して汚染水の漏出を防ぐ。放射性物質を含む配管の切りくずが飛び散らないよう、切断機に磁石付きの受けも取り付けた。
現場が汚染されているため、切断機を大型クレーンでつり上げて遠隔操作する。高さ120メートルの排気筒の上部半分を解体する作業(19年8月~20年5月)もクレーンによる遠隔操作で進めたが、トラブルが相次いだ。このため、10月下旬からの切断開始に向け、実物大模型での訓練や動作チェックを続けている。【東京新聞】