東京電力福島第一原発事故を受け、福島県内の子どもの乳歯に放射性物質がどの程度取り込まれたかについて確かめる調査で、県歯科医師会などの研究チームは23日、原発事故発生前と発生後に形成された歯の放射線量に差はないとする中間結果を初めて明らかにした。2020(令和2)年までの調査段階では「原発事故による内部被ばくは少ないと考えられる」との見解を示した。
県歯科医師会は2014(平成26)年から東北大、奥羽大と連携。原発事故発生時の居住地を基に本県の約6000本を含めて全国から約7000本の乳歯を集め、調べている。
歯にはストロンチウムやセシウムなどの放射性物質が既に存在している。代謝現象がないため、原発事故の発生が歯の放射線量にどの程度影響したかについて分析した。形成時期による放射線量の違いを見ると、いずれも数値は平均値の一○○前後となっており、「他地域との差も見られなかった」としている。
乳歯が体内で作られてから抜けるまで6年~12年かかるため、これまで集めた歯は原発事故前に形成されたものが多かった。2017年から徐々に原発事故後に体内でつくられた歯の割合が増えてきており、分析を進めている。研究チームは原発事故後に作られた乳歯をさらに収集し、研究の精度を高めていく方針。
研究チームの代表者を務める佐々木啓一東北大副学長は「これから本格的な調査が始まる。乳歯の収集に協力してほしい」と語った。海野仁県歯科医師会長は調査を通して「県民の安全安心につなげたい」と話した。【福島民報】