政府が4月に決めた東京電力福島第1原子力発電所の汚染水を浄化した処理水の海洋放出に関連し、風評被害への追加対策などを議論する第1回関係閣僚等会議ワーキンググループ(WG)が31日、福島市内で開かれた。政府からは江島潔経済産業副大臣らが出席。地元からは福島県や農水業の関係者が参加した。海洋放出には当初から漁業関係者らが反対しており、国が前面に立って風評被害への対策を進めることなどを求める声が相次いだ。
会合では地元の農水業関係者らから、「事故後、多額の資金を投入し、対策をしてもらったが、(海洋放出で)新たな風評への懸念がある。対応のあり方を根本的に見直さなければ農水業の着実な復興にはつながらない」といた声が寄せられた。鈴木正晃副知事は「(事故後の)10年間に積み上げてきた努力が水泡に帰すとの懸念もある。国が前面に立ち、万全の対応をしてほしい」と要望した。
第1原発ではこれまで、燃料デブリを冷やすための注水などで汚染水、処理水が増え続けている。東電によると、処理水の保管タンクは令和5年春に満杯になる見通し。残留する放射性物質トリチウムを十分に希釈したうえでの海洋放出は現実的な選択肢だった。
しかし原発事故以降、地元の関係者が築いてきた農水産物の安全性への信頼が海洋放出を機に再び損なわれる事態は何としても避けなければならない。
今回のWGでは風評が起きることを防ぐ手段のほか、実際に風評被害が発生した際の適正な賠償の方法や責任の所在などを明確にすることなども持ち上がった。また、必ず風評被害が起きる前提で対応組織を作るべきといった意見や、消費者心理への働きかけ、国による一定価格での買い取りなどを求める声も続出した。
東電による海洋放出開始までは、設備工事や原子力規制委員会の審査などのために2年程度を要する。政府は今後もWGで要望を聞き取るなどして、今夏をめどに風評対策を中心とした中間的な取り組み策をまとめたい考えだ。【SankeiBiz】