関西電力が福井県内に持つ運転開始から40年を超える原発3基をめぐり、同県議会が再稼働を事実上容認したことで、関電にとって長らく経営上の不安材料だった地元同意に道筋が付いた。40年超原発の再稼働が実現すれば、安全対策工事への巨額投資の回収や脱炭素社会の実現に向けた弾みとなる。ただ、県と約束する使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外候補地確定が依然課題となっており、先行きに不透明さが残る。
平成23年の東日本大震災以前、関電にとって原発は電源構成の4割以上を占める主力電源だった。しかし震災後は相次いで原発の停止を余儀なくされ、火力発電の代替でしのいできた。発電コストの低い原発を動かせないことで、関電は2度の電気料金値上げに踏み切らざるを得なかった。
さらに国の原子力規制委員会の新基準に基づいて巨額の安全対策工事が求められ、これまでに対策費として1兆695億円を計上。40年超原発が再稼働すれば1基あたり月25億円の収支改善が見込まれるため、巨額投資の回収に見通しが立つことになる。
また、政府の温室効果ガス削減目標に向けた貢献にも期待がかかる。森本孝社長は「主力は再生可能エネルギーと原子力」と述べており、発電時に二酸化炭素を排出しない原発を脱炭素の柱に位置付ける。
ただ、関電にとって今後の焦点となるのが、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の候補地確定だ。森本社長は2月に福井県を訪問し、杉本達司知事に「不退転の決意で臨む」と述べ、令和5年末までに候補地が確定できない場合、40年超原発の運転を停止することを表明している。
これまでに大手電力会社で構成する電気事業連合会が、東京電力ホールディングスと日本原子力発電が運営する青森県むつ市の施設を共同利用する案の検討を公表。関電も「検討に積極的に参画したい」としているが、むつ市の宮下宗一郎市長は「(関電が候補地にすることは)考えられない」と反発しており、実現のめどは立っていない。【産経新聞】