脱原発派で知られる自民党の秋本真利衆院議員(千葉9区)が、28日に水戸市で予定する「自民党発!『原発のない国へ』宣言」(東京新聞)の出版記念講演会を巡り、「原発の話は一切しない」と確約する文書を党茨城県連に提出していたことが分かった。県連は講演中止を党本部に求めており、配慮した二階俊博幹事長が講演を認める条件として示したとみられる。
秋本氏によると、文書は14日、二階氏側からの指導で県連幹事長の西條昌良県議宛てに郵送。講演会場で自民党への支援を呼び掛けることも約束したという。秋本氏は「講演に行けなくなっては元も子もない。組織人なので従う」と説明。当日は、再生可能エネルギーの原発に対するコスト面の優位性を中心に話したいとしている。
ただ、県内では日本原子力発電東海第二原発(東海村)の運転差し止めを命じる水戸地裁判決が18日に出たばかり。会場から原発に関する質問が出るのは確実で、秋本氏は難しい対応を迫られそうだ。
講演会は市民らでつくる実行委員会が企画した。県連は、実行委に立憲民主党などの地方議員が含まれることに「反党的行為」と反発。海野透会長代行や東海村選出の下路健次郎氏ら県議4人が12日、党本部に二階氏を訪ね、秋本氏に講演の辞退を促し、従わない場合は処分を検討するよう申し入れた。
県連会長の梶山弘志経済産業相は19日の記者会見で「秋本さんの考え方に制限を加えることではない。他党と組んで、(県連に)一言の断りもなくやることに問題がある」と述べ、あくまで党内の「筋目」の問題だと強調した。
◆「菅派」内紛の様相も
申し入れを受け、二階氏側は対応を協議。西條県議と親しい林幹雄幹事長代理は県連寄りの姿勢を見せたが、再生エネ派で原発に批判的な柴山昌彦幹事長代理は中止に追い込むのはリスクがあると主張した。梶山氏が菅義偉首相の側近として知られる一方、秋本氏も首相を支える党内グループに所属し、「菅派」の内紛の様相も呈した。
二階氏は22日の会見で、秋本氏が講演を決行しても「いきなり処罰はしない」とした上で、話す内容は「本人の良識」に委ねる意向を表明。講演の辞退は求めない代わりに、将来的な不利益処分の可能性には含みを残すことで、くぎを刺した形だ。県連も二階氏の裁定を受け入れた。
秋本氏の「政治の師」の河野太郎行政改革担当相も2014年5月、水戸市で「脱原発」をテーマに講演し、県連の抗議を受けた。【東京新聞】