政府は23日、菅義偉首相の18日の記者会見で指名されなかった報道機関が会見後に提出した質問に書面で回答した。本紙は、日本原子力発電の東海第2原発の運転を認めなかった水戸地裁判決などを受け、原発再稼働の考えを聞いた。首相は「新規制基準に適合する原発のみ、地元の理解を得ながら進めていく方針に変わりはない」と答えた。
◆原発排除しない考え
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を進める上で、多くの問題を抱える原発への依存は再考すべきではないかとの本紙の質問に対し、首相は「原子力も含めてあらゆる選択肢について議論を進める」として、原発を排除しない考えを示した。東京電力柏崎刈羽原発のテロ対策設備不備問題は「大変遺憾で、深刻に受け止めている」と回答した。
18日の会見は、幹事社を含めて13人が質問し、55分で終了。政府は、指名されなかった記者の質問を文書で受け付け、8社が提出した。
◆回答詳報・本紙分
東京新聞の質問 水戸地裁は東海第2原発の再稼働を認めない判決を言い渡した。東海第2は新規制基準を満たしているが、司法は再稼働を認めなかった。また、東電の柏崎刈羽原発で、テロ対策の不備が明らかになり、早期再稼働は不可能となった。さまざまな問題にもかかわらず、原発再稼働を目指すか。多くの問題を抱える原発に依存してカーボンニュートラルを進めるより、他の方法を考えるべきではないか。
首相の回答 安全対策をしっかりと実行しなければならない東電が重大で不適切な事案を起こしたことは大変遺憾で、深刻に受け止めている。東電は高い緊張感、責任感を持って、規制委員会の検査に真摯に対応すべきで、経済産業省から厳しく指導していく。一方、原発については、依存度を低減させつつ、原子力規制委員会が世界で最も厳しい水準の新規制基準に適合すると認めた原発のみ、地元の理解を得ながら進めていく方針に変わりはない。また、2050年カーボンニュートラルを実現するには、電源の脱炭素化は大前提だ。省エネ、再エネに加え、原子力も含めてあらゆる選択肢について議論を進め、11月のCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)までに結論を出していく。なお、ご指摘の判決や広島高裁の伊方原発に関する判決は民事訴訟で、国は訴訟の当事者ではない。【東京新聞】