東海第二原発の運転差し止めを命じた水戸地裁は、原発から半径30キロ圏内の自治体に義務付けられている避難計画の策定が進まず、実効性が不十分と指摘。人口密集地帯にある原発が抱える根本的な問題に新たな判断を示した。
◆人口は建設前より大幅増
運転開始から40年を超える東海第二の周辺は設置当初、人口が今ほど多くなかった。建設が始まる3年前の1970年、立地する東海村の人口は1万9000人だったが、現在は倍増している。
東京電力福島第一原発事故後、政府は広範囲にわたって放射能汚染が広がった反省を踏まえ、30キロ圏の自治体に避難計画を義務付けた。これにより、東海第二では避難計画の対象人口が全国最多の約94万人に膨れあがった。
◆実効性のない空論
しかし、これだけ多くの人々を安全で円滑に避難させるのは難しい。避難計画では、5キロ圏から30キロ圏の住民は一時屋内退避することになっているが、福島の事故時のように「われ先に」と逃げることによる混乱も予想される。東海第二の周辺のある首長は「94万人が一斉に避難するのは不可能だ」と認める。
地裁判決は「防災体制は極めて不十分」と指摘した。原発事故と地震の複合災害なども含め、本当に実効性のある避難計画というのは「机上の空論」だろう。その現実を直視すれば、原発再稼働は極めて困難と言わざるを得ない。【東京新聞】