東日本大震災から11日で10年。東京電力福島第一原発事故の影響で、関西電力の原発もいったん稼働を停止。この間、再稼働を進めてきたが、発電量における原発割合は約5割だったのが2割前後にまで低下。相次ぐトラブルなどでどれほど稼働できるのか先行きも見えない。一方、原発投資額は増えるばかりで、安全対策費は1兆円以上に膨らんでいる。
震災後、国は2013年に原発の安全対策の強化を求める新規制基準を施行。関電は原発11基を持つが、コストが見合わないなどとして4基の廃炉を決めた。残る7基のうち4基がその後に再稼働したが、一部は定期検査などで停止中だ。
震災前、関電の発電量の全体のうち50%超を原発が占め、電力大手のなかで最も依存度が高かった。震災後、14年度以降は稼働できなくなって0~1%で推移。その後は再稼働を進めているが、点検時の損傷発覚や必要な工事の遅れなどで10~20%台で推移している。
稼働率の低いままの原発だが、その間の設備投資は巨額となった。新規制基準に対応するために関電が計上した安全対策費は1兆695億円。このうち支払い済みの金額や定期検査費用の一部を集計した原発設備投資額は、11年度から20年4~12月期までで8612億円にのぼっている。
震災直後、発電事業の設備投資額のなかで原発が占める割合は年間1割程度に過ぎなかった。だがその後は急上昇し、19年度は8割近くにまで達した。
関電はできるだけ多くの原発の稼働を期待するが、想定通りに進んでいないのが実情だ。支出だけが先行して重しとなっている。
運転40年超の老朽原発3基の再稼働をめざすが、地元の福井県知事が判断の前提としてきた、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外候補地の選定は難航中。関電は2月、「候補地確定」の期限として福井県に3年近く先の23年末を提示。再稼働の同意を取り付けるための妥協策ともみられかねない内容だった。これを受けて知事は議論を進める考えを示したが、県議会からはこうした経緯に疑問の声もあがっている。
建て替えの検討方針を示し、地質や生態系などの調査に入った美浜原発(福井県)についても、震災後は動きが止まったままだ。関電役員らが福井県高浜町の元助役から金品を受領していた問題が明らかになり、「具体的な計画に言及できるところではない」(稲田浩二副社長)という。
そんななか関電は50年の脱炭素化に向けた施策も掲げている。「原子力という電源は必要不可欠」というのが基本姿勢だが、再生可能エネルギーや、水素やアンモニアを混ぜて燃やすことをめざす火力発電といった、原発以外の発電設備を導入・更新していくことは避けられない。幹部の一人は「今後は原発だけでなく、どの分野にどんな優先順位で投資していくのか考えないといけない」と頭を悩ませる。【朝日新聞】