東日本大震災から10年を前に、政府は9日、2021年度以降の復興の基本方針を改定し、閣議決定した。懸案となっている東京電力福島第一原発の処理済み汚染水の処分方法については「適切なタイミングで結論を出す」などと記すにとどまった。漁業者らとの調整が進まず、決定の先送りを続けている状態だ。
改定は19年12月以来。21年度以降の5年間を「第2期復興・創生期間」と位置づけ、福島の復興・再生には「引き続き国が前面に立って取り組む」とした。住民が戻らない地域に移住を促す対策などを進める。一方、処理済み汚染水の対応は「先送りできない課題」としながらも、「風評対策も含め、適切なタイミングで結論を出していく」としただけで、具体的な決定の時期は示せなかった。
汚染水問題では昨年2月、専門家による経済産業省の小委員会が、放出基準以下に薄めて海洋放出する方法を有力と提言していた。これを受け、第一原発がある福島県大熊、双葉両町は、処分方針の「早期決定」を政府に要望。菅義偉首相も昨年9月には、「できるだけ早く政府として処分方針を決めたい」と明言していた。
だがその後、海洋放出に反対する全国の漁協などとの交渉が難航。決定の時期が見通せなくなっている。
処分方法の決定について、平沢勝栄復興相は9日の閣議後会見で「いま関係者に一生懸命説明している最中だ。それが終われば決定する」と説明。梶山弘志経済産業相は「できるだけ早くに、という思いは変わらない」と述べた。
汚染水の発生量は、原子炉建屋に浸入する雨水に関係しており、昨秋からの少雨で少なく抑えられているという。東京電力ホールディングスは従来、敷地内のタンクが処理済み汚染水で満杯になる時期を「22年夏」としてきたが、文挟誠一副社長は9日の衆院震災復興特別委員会で、その時期を「22年夏以降になる」と修正。「天候要因も政府決定の安易な先延ばしにつながっている」(政府関係者)との見方も出ている。
【朝日新聞】