東日本大震災の発生から10年となるのを前に、政府は9日、復興の基本方針を改定し、2021年度から5年間の「第2期復興・創生期間」に取り組む施策を盛り込んだ。この10年で被災地のインフラ復旧は大きく進む一方、福島第1原発でたまり続ける放射性物質を含んだ水の処理方法など、原発事故関連の課題は積み残されたままで、原発事故がなお暗い影を落としている。
改定方針では、原発被災地をロボットやエネルギーなど先進技術の研究や人材育成の拠点にする構想を明記。一方で、原発の事故処理過程で発生している処理水については、具体的処理方法はもちろん、決定の時期も「適切なタイミングで結論を出していく」との表現にとどまった。
政府はこれまで、処理水を海洋へ放出する案を軸に検討を進めてきた。しかし、放出後の風評被害への懸念から、漁業関係者に加え、与党内から強い反発の声が出ており、調整は難航している。
風評被害の解消は、被災地の農林水産業の再生にとって欠かせない課題だ。平沢勝栄復興相は9日の記者会見で「まだ15の国・地域から『差別』されている」と危機感を強調。政府全体で、国際的な情報発信を強化していく姿勢を示した。
自民党の復興加速化本部プロジェクトチーム(座長、根本匠元復興相)は同日、平沢復興相に対し「科学的知見やデータに基づき、食品などの出荷制限の問題点を幅広く検証し、必要な措置を検討する」よう求める提言を提出した。改定方針でもこうした「検証」に取り組むとしており、政府は今後、具体的な検討を進める。【時事通信】