関西電力が29日発表した2020年4~12月期の連結決算は、経常利益が前年同期比14%減の1611億円だった。新型コロナウイルス禍や新電力の攻勢が響いた。21年1~3月期は一時的な電力需給の逼迫に伴い追加調達した燃料などのコストも懸念材料となりそうで、一段の経営効率化が求められる。
「減収減益となり、大変厳しい状況だった」。関電の森本孝社長は同日の記者会見で20年4~12月期決算を総括した。
コロナ禍は経常利益を331億円押し下げた。20年11月初旬から原子力発電所が検査ですべて止まり、発電コスト増に伴う採算悪化も響いた。売上高は7%減の2兆1842億円、純利益は15%減の1151億円となった。
コロナ禍に伴う電力需要の減少など事業環境は厳しい。そこに電力の全国的な需給逼迫という課題も年末から加わった。
関電の場合は原発の稼働ゼロに加え、一部火力発電所のトラブルや水力発電所の水不足が重なった。年末年始の寒波で暖房需要が膨らみ、1月前半は供給力に対する需要の割合を示す電力使用率が90%台後半に達する局面が頻発した。
関電はグループとして他社から電力を融通してもらい、火力発電ではアジアでスポット価格が上昇するなかで液化天然ガス(LNG)の調達量を増やしたり、発電コストが割高な石油を用いたりした。需要増は電力販売が増えるプラス面はあるが、コスト増のマイナス影響の方が大きくなりそうだ。
21年3月期は経常利益で前期比39%減の1300億円を見込む従来予想を据え置いた。21年1~3月期は四半期ベースで4年ぶりの経常赤字に沈む見通しだ。
森本社長は「次期以降を見据えてコスト構造を変える」として、在宅勤務など働き方改革のほか、人工知能(AI)やドローンを活用した点検作業の省人化を加速する考えを示した。
LNGを使わずに発電できる原発を巡っては、1月中旬に大飯4号機(福井県おおい町)が稼働を再開した。定期検査中の高浜3号機(同県高浜町)も最短で2月下旬に再稼働できる可能性がある。1基が稼働すれば大飯原発は月35億円ほど、高浜原発は月25億円ほどの費用を圧縮できる。
運転開始から40年を超える原発3基でも再稼働を目指しているが、先行きは不透明なままだ。使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設を巡り、福井県の杉本達治知事は県外の建設候補地を明示するよう求めるが、まだ実現できていない。
この日の会見で森本社長は候補地明示について「最重要課題の一つで、他電力や国とも連携しながら、改めて報告できるよう鋭意取り組む」と説明した。一方で時期については「未定としか申し上げられない」と述べるにとどめた。
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関電は29日、法人顧客の脱炭素経営を支援する専門部署「脱炭素ソリューショングループ」を設置したと発表した。脱炭素に向けた工程表策定やエネルギー管理などをサポートする。【日本経済新聞】