経済産業省は国のエネルギー基本計画改定を議論する21日の有識者会議で、2050年時点での電源構成の「参考値」として、再生可能エネルギーで5~6割、原発と化石燃料による火力を合わせて3~4割、二酸化炭素(CO2)を出さない水素とアンモニアによる火力で1割前後を賄う案を提示した。この数値を基準に今後、再生エネがより多い想定や少ない想定など複数のシナリオを検討する。
総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(分科会長・白石隆熊本県立大理事長)に事務局案として提示。化石燃料を使った火力は現状の7割から減らすが存続させ、CO2の貯留や再利用技術によって排出量の実質ゼロ化を目指す。経産省は今回の電源構成を「目標ではなく、議論を深めるための1つの目安」とし、決定ではないことを強調して委員の了承を得た。
会議では、50年に向けて原発を継続する方向性も示し、「一定規模の活用」を目指すとした。梶山弘志経産相は「再生エネに全ての電力供給を頼るのは現実的ではない。原子力は実用段階にある脱炭素電源として安全性を大前提に活用していく必要があるが、国民からの信頼回復が大きな課題だ」と述べた。
原発利用については、分科会長を除く出席委員22人の多くが理解を示した上で、原発の新増設や新型炉の開発、運転期間の延長容認や、核燃料サイクルの推進などを主張した。
一方で「(原発に対して)反対側の意見もよく聞いて、丁寧に説明することが必要」(田辺新一早稲田大理工学術院教授)、原発のコストを細かく分析しないと「国民の納得は得られない」(小林いずみANAホールディングス社外取締役)などと慎重な検討を求める意見も示された。
この分科会では、政府がCO2排出量の実質ゼロを目指す50年時点でのエネルギー需給状況を検討した上で、より近い30年の目標を決める方針。現行の第5次エネルギー基本計画では、30年時点で再生エネ22~24%、原発20~22%の電源構成が目標だが、それぞれの比率をどう見直すかが焦点となっている。【東京新聞】