福井県にある大飯原子力発電所をめぐって、大阪地方裁判所が4日、原発の設置を許可した国の決定を取り消す判決を言い渡したことについて、原子力規制委員会は来週、臨時会合を開き、控訴することも含めて対応を検討することにしています。
関西電力の大飯原発3号機と4号機について、住民らが、設置を許可した原子力規制委員会の決定を取り消すよう求めていた裁判で、大阪地方裁判所は4日、許可を取り消す判決を言い渡しました。
福島第一原発事故を教訓にした新たな規制基準が設けられてから、原発の設置許可を取り消す司法判断は初めてです。
裁判では、想定される地震の揺れ、「基準地震動」の設定が争点で、算出に使う式の結果に「ばらつき」があるものの、規制委員会は審査の中で「ばらつき」を反映すべきかどうかの検討を行っておらず、「判断の過程に誤りや欠落がある」としました。
一方、国側は「ばらつき」に関する住民側の解釈は誤っており、基準地震動はすでに十分、安全側に評価されていると主張していて、「国の主張について裁判所の十分な理解が得られなかったものと考えている」としています。
規制委員会は、関係省庁と協議するとともに今月8日に臨時会合を開き、控訴を含めて対応を検討することにしています。
計算式の使い方に疑問を呈する専門家も
再稼働を目指していた大飯原発の審査にあたり、関西電力は当初、基準地震動を「最大700ガル」として機器や配管などの耐震対策を行う方針でした。
これに対し原子力規制委員会は、審査の中で基準地震動の想定を厳しく見直すよう求めました。
具体的には、周辺の連動する活断層の数を当初の2つから3つに増やして活断層の長さを延ばしたり、震源の深さを当初の4キロから3キロへと浅くしたりしたうえで、基準地震動を導くべきだとしました。
この結果、関西電力は基準地震動を当初より厳しい「最大856ガル」として、耐震対策を取るとして、規制委員会はこれを妥当としました。
この「856ガル」を算出する際に使われたのは、「入倉・三宅式」と呼ばれる計算式です。
実際に起きた過去の地震などをもとに、大飯原発の周辺で想定される活断層の面積や震源の深さなどから地震規模を算出する計算式です。
審査ではこの計算式で導かれた結果をさらに1.5倍に。
地震の不確かさを考慮するためです。
このように安全側に評価をしていることから、規制委員会は、今回の判決が指摘した地震規模の「ばらつき」を踏まえて数値の上乗せをするかどうかの検討は行っていないということです。
審査をめぐっては、計算式の使い方に疑問を呈する専門家もいました。
大飯原発の地震想定について、審査を担当した規制委員会の元委員で、東京大学名誉教授の島崎邦彦氏です。
島崎元委員は、「入倉・三宅式」では震源となる断層の正確な面積が分からないため地震の予測に使うのは適切ではなく、大飯原発では基準地震動が過小評価になるおそれがあるとしたのです。
島崎元委員は、2016年に規制委員会にこの指摘をしました。
規制委員会は、「入倉・三宅式」とは別の計算式を使って地震の想定を出したところ、信頼性のある結果が得られず、「入倉・三宅式」の計算式は有効だとしています。
こうしたことから規制委員会は「最大856ガル」とした基準地震動の見直しの必要はないとしています。【NHK】