東日本大震災から9年8カ月となる11日、東北電力女川原発2号機の再稼働が事実上、決まった。村井嘉浩知事がこの日、地元の女川町の須田善明町長と石巻市の亀山紘市長と会談し、再稼働に必要な地元同意を表明した。ただ、地元が不安を感じている避難道路の整備にどう具体的に取り組むのか、知事から明快な言葉はなかった。
会見での村井嘉浩知事との主なやりとりは次の通り。
――知事のなかでの判断のポイントは。
民意の代表である県議会や全市町村長、立地自治体の首長が(再稼働に)理解を示したことが大きかった。
――再稼働の必要性は。
一人の政治家として原発について考えはあるが、それをみなさんの前で話すことで、県議会の判断や市町村長の判断にくもりが出てはいけないと控えてきた。
私は再稼働は必要だと考えている。原発がある以上、事故が起こる可能性はある。事故があったからダメとなると、すべての乗り物を否定することになる。技術革新をして人類は発展してきた。
福島の事故を教訓として、さらに高みを目指す、目指さないといけない。どういう時にも再生可能エネルギーで日本のエネルギーがまかなえる技術に達するまで、原発は必要だ。原油由来のエネルギーに頼らないで、エネルギーがまかなえる段階で原発の依存度を少なくする。県議会と立地市町の議会、市町村長の考えは間違っていない。
――避難道路の問題は。
両首長から具体的にこの道路をという要望はなかった。全力で、継続して、着実にやると回答した。ある程度、財政的な出動をしても県民の理解は得られると思う。
――9日に市町村長会議があったばかりで、スケジュールありきでは。
市町村長会議の判断は、「3人で話し合った結果を総意とする」で、早くしないと逆に失礼だ。東北電力から事前協議の申し入れがあって、7年近くずっと議論してきた。そろそろ結論を出しても良い時期だと考える。事前了解がなければ着手できない工事もある。あと数年以内に安全対策工事を終えるためには、このタイミングでないと支障が出るというのも事実あった。
――住民説明会の追加を要望した県民もいる。住民投票は考えなかったのか。
住民投票は県議会で2回も否決された。私の力が及ぶところではない。住民説明会はすべての議事録をネットで公開している。決して少なすぎることはない。適切な時期ではないか。
県議会も、市町村長会議もスムーズに進んだ。無理やり(1回で)協力してくれとお願いしたわけではない。
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東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機の再稼働をめぐり、村井嘉浩知事は9日、県議会とともに「県民を代表する場」と位置づけている市町村長会議を開いた。再稼働に賛成する意見が出た一方で、3人の町長が明確に反対した。
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仙台市のホテルであった会議には、全35人の市町村長が出席した。再稼働への反対姿勢をこれまで明確にしていた美里町の相沢清一町長は「福島では今も4万人がふるさとに戻れない」と訴えた。原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の最終処理場がない問題を指摘。避難道路の課題についても「再稼働と引き換えるぐらいの覚悟で国に要望して欲しい」と迫った。
石巻市と広域避難協定を結んでいる加美町の猪股洋文町長も「図上訓練すら実施されていない」と避難計画の問題を挙げた。「2号機の再稼働を認めれば3号機の稼働につながり、40年も原発が継続する。ヒューマンエラーはあり得る。多くの県民は不安を持っている」とも述べた。色麻町の早坂利悦町長は「知事として再生可能エネルギーに舵(かじ)を切るべきだ」と訴えた。
一方、大郷町の田中学町長は「『原発はない方がいい』と答えてきたが、福島の事故を教訓に原発の安全度は高くなったと感じる」と賛成に転じた。仙台市の郡市長は「個人的には再生可能エネルギーに転換すべきだ。避難計画の実効性を高めるために知事はリーダーシップを発揮してほしい」と求めた。
市町村長の意見表明は約1時間に及んだ。塩釜市の佐藤光樹市長が「立地市町の議会、県議会が容認したのは重い」と訴えたのを始め、大河原町の斎清志町長も「女川、石巻ははるかに高いリスクを負うのだから、両議会と県議会の判断を尊重すべきだ」と発言。多賀城市の深谷晃祐市長も同様意見を述べた。
こうした声を受け、村井知事が最後に「石巻市や女川町長の考え方に理解を示しているのが総意だ」との認識を示した。そのうえで、石巻、女川の両首長との3者会談に結論を委ねさせてほしいと提案し、拍手で了承された。
会議後に報道各社の取材に応じた知事は「大勢の意見が占めれば(判断を)収斂(しゅうれん)させようと思っていたが、皆さん筋が通っていた。いつまでもという訳にはいかないので3者会談でまとめたい」と語った。【朝日新聞】