東京電力・福島第一原子力発電所の事故原因を独自に調査してきた、新潟県の委員会が報告書をまとめ国や東京電力に対し、廃炉作業の中で事故に関する知見を見つける努力を継続するよう求めています。
専門家でつくる新潟県の技術委員会は事故の翌年から調査を続け26日、10項目の検証結果をまとめた報告書を新潟県知事に提出しました。
この中では事故後2か月にわたり東京電力が「メルトダウン」ということばを使わなかったことを巡り、委員会の調査がきっかけで東京電力のマニュアルなどが明らかになった経緯を報告しています。
これについて東京電力は事故から5年たって事実上の隠蔽を認めました。
また、水素爆発を起こした1号機について、原子炉のふたを固定するボルトが高熱で緩み、隙間から水素ガスが噴出するなどして爆発につながった可能性も指摘していて、東京電力は「否定はできない」としています。
このほか、委員会がテーマに掲げてきた1号機の電源喪失の理由については、物的証拠は出ていないとしたうえで、津波の到達時間の検証などから、地震の影響で電源を喪失した可能性を現段階では否定できないとしました。
福島第一原発は汚染で、まだ調査に入れないエリアがあり、報告書は今後廃炉を進める中で、事故に関する知見を見つける努力を継続するよう国と東京電力に求めています。
新潟県は報告書を柏崎刈羽原発の再稼働に同意するかどうかの判断材料の一つにする考えです。
座長「多様な可能性否定せず」
技術委員会の座長を務めた京都大学の中島健教授は「事故のシナリオについて多様な可能性を否定せずに、教訓を引き出そうとしたというのが技術委員会のいちばん大きい特徴だ。検証はひと区切りとなるが今後、新しい知見が出てくれば当然もう1回、議論をせざるをえないと思います」と述べました。
そのうえで、柏崎刈羽原発の安全対策の検証については「いつまでにまとめるかのスケジュール感はないが、どこまで深掘りするか各委員の問題意識によると思う」と述べ、今後は、柏崎刈羽原発の安全対策の検証に力を入れていくとしています。
新潟県知事「柏崎刈羽原発の議論を」
報告書を受け取った新潟県の花角知事は「これでいったん福島の事故の検証については区切りをつけていただいて、引き続き本来のミッションでお願いしている柏崎刈羽原発の安全性を確認する議論をお願いしたい」と述べました。
東京電力「安全対策に反映させていきたい」
報告書の提出を受けて東京電力は「事故の検証では、さまざまな視点で議論していただき、その一つ一つが私たちの教訓だと感じています。その教訓をしっかりと柏崎刈羽原子力発電所の安全対策に反映させていきたい」とコメントしました。【NHK】