約8年にわたる東海第二原発差止訴訟が7月2日に水戸地裁(茨城県)で結審しました。
この訴訟は、地震、津波、火山などの自然災害に対する安全性を欠くこと、基準地震動が過小であること、運転開始から40年以上経過した老朽原発であること、避難対象人口が多く避難は非現実的であることなど、一つだけでも原発を止める十分な理由となる争点をフルスケールで主張した充実した訴訟となりました。
原告団はこれまでの主張の総まとめとなる最終準備書面を提出し、裁判官に向かって、直接最終陳述を行ないました。
まず、河合弘之弁護士が、東海第二原発での重大過酷事故は首都圏を壊滅させるものであって、健康で文化的な生活や幸福追求権といった憲法的な価値を根底から突き崩すと指摘し、裁判官も当事者として差し止めの判断をするべきことを強く訴えました。
次に鈴木裕也弁護士が、実際に福島原発事故が原因で「原発さえなければ」との遺書を残して自殺した福島県相馬市の被害者がいたことを伝え、原発事故の重大性を再度喚起したうえで、東海第二原発の再稼働による人格権侵害の具体的危険の有無が深層防護の徹底にかかっていること、そして裁判所の審理判断すべき焦点であることを陳述しました。
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次に海渡雄一弁護士が、原発差し止めに対する司法の消極的な姿勢も福島第一原発事故を引き起こした要因であり真摯に反省すべきこと、そして今度こそ司法が一歩乗り出して市民の生命と安全を守るという使命を自覚し、達するべきことを主張しました。
最後は原告共同代表の大石光伸氏が、原告としての思いや原発事故の体験者のつらい経験を切実に訴え、人々がふるさとを失い、人生を狂わされ、穏やかな暮らしを奪われ、人間関係や家族を分断されてしまう原発事故という災禍を繰り返さない、そして特に弱い立場の人々も元気で健やかに暮らせるようなきっかけとなる判決を願うことを伝えて、最後の陳述を締めくくりました。
判決は2021年3月18日に言い渡される予定。裁判所の事実に向きあった真摯な判断を期待しています。
(北村賢二郎・弁護士。2020年7月31日号)【週刊金曜日】