関西電力の金品受領や役員報酬補填を巡り、関電が旧経営陣5人に計約19億円の損害賠償を求めた訴訟で、5人が請求棄却を求めて争う姿勢であることが31日、分かった。旧経営陣側は大阪地裁に提出した答弁書で、福井県高浜町の元助役(死去)から受け取った金品は将来の返却を予定した「預かり保管」だったと主張。法令違反やコンプライアンス違反に当たらないとしている。
旧経営陣側は答弁書で、元助役の森山栄治氏が高浜原子力発電所の運営を妨害する可能性があったと言及し、「多額の損失を被るリスクを犯して元助役と対決姿勢をとることは困難であった」と指摘。金品を断らなかったことは「合理性を欠いた経営判断と言い切ることはできない」とした。
役員報酬の補填問題についても、森氏らが退任役員に対して「新たに実質的な委嘱業務を割り当て、対価として所定の金員を支払っている」として、「補填」ではなかったと主張した。
一方、5人のうち、森詳介前相談役が現取締役に電話をかけて関電側の訴訟代理人の解任を求めたとして、関電が「圧力をかけてくることはきわめて異常で甚だ遺憾」とする書面を大阪地裁に提出していたことも判明。森氏側の代理人弁護士は「電話はしたが、辞任や交代を求める趣旨ではない」と説明している。
関電側書面などによると、森氏は7月13日、社外取締役で監査委員長の友野宏氏に電話し、関電が設置した「取締役責任調査委員会」の委員だった弁護士2人を訴訟代理人にしたことが不当だとして「訴訟却下を申し入れる」と話した。
その上で弁護士2人について「弁護士会に懲戒を申し立てることを予定しており、そうなれば世間を騒がせることになるため、現段階で交代させる方がよい」と述べたという。【日本経済新聞】