東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働を巡り、30キロ圏内の7カ所で今月開かれた県主催の住民説明会が終了した。重大事故を想定した広域避難計画や東日本大震災で被災した2号機の安全性について、国や東北電は木で鼻をくくった回答を繰り返し、参加者の疑問や不安を払拭(ふっしょく)できなかった。再稼働に必要な「地元同意」の判断材料と、村井嘉浩知事が位置付けた意見聴取の場。募集定員の4割に届かず、開催の事実だけが残った。
◎避難計画「現場見たのか」
説明会は、国や東北電が(1)新規制基準への適合を認めた原子力規制委員会の審査(2)政府が了承した広域避難計画(3)原発の安全対策-などを紹介。7カ所で計124人が質疑に立った。
主な質問と回答は表の通り。30キロ圏内が対象の避難計画には「机上の空論」などと、実効性への疑念が相次いだ。
即時避難する5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)、5キロ圏を通って逃げる準PAZは震災の津波で道路が浸水し、海岸はがれきで埋め尽くされた。
「陸の孤島になる。避難できない」「現場を見たのか」。9年前の甚大な被害を十分考慮していない内容に、参加者が怒りをあらわにしたのは当然と言える。
5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の会場では、いったん屋内退避した後、放射線量に応じて避難するという分かりにくい方法に批判が上がった。
「避難先まで10分。屋内退避が必要か」「放射性物質の放出後に避難したら、被ばくする」。いら立つ住民に、計画を策定した内閣府は「屋内退避をお願いする」。人ごとのような一点張りだった。
2号機の安全性についてもしかり。「再稼働しても安全なのか」。シンプルな問いに、原子力規制庁は「新規制基準に適合していると確認した」、東北電は「限りなく(リスクを)ゼロに近づける思いだ」と核心を避ける場面が目立った。
◎認められなかった再質問
前面に出ようとしない県への不満も噴出した。県は5月、避難先まで3~5日かかる試算を示したが、質問があれば答えるという後ろ向きの対応に終始。「国任せで、県としての責任が感じられない」との住民の言葉に説得力があった。
総参加者は募集定員2000人の38%に当たる757人。うち30キロ圏内は329人で、避難対象約19万9000人に占める参加率は0.2%の低さだった。
新型コロナウイルスの影響に、お盆時期の開催。懐疑的な声は事前からあったが、県は「少ないかどうかは捉え方次第」(原子力安全対策課)と意に介さない。
村井知事は24日の定例記者会見で「質問は出尽くした」と言及。追加開催しないと表明したが、説明会では再質問を認めず、疑問点を抱えたまま会場を後にした住民も多い。
安全対策工事の完了は2022年度で時間はある。県民の理解を得る努力を尽くし、地元同意を慎重に判断するためにも、説明会の継続を再検討するべきだ。【河北新報】