東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)再稼働の前提となる「地元同意」(※)で、女川町議会が最も早く可否判断を示そうとしている。
町議会原発対策特別委員会は来週にも、再稼働反対の請願2件、賛成の陳情4件をそれぞれ採択するかどうか決める。議長を除く全議員11人で構成する特別委の決定は事実上、町議会の意思となる。
3日にあった前回の委員会は、国の説明をさらに求めるかを巡って紛糾した。一部委員が「議論を尽くして結論を出すべきだ」と強く主張したが、最終的に不要と判断された。終了後、宮元潔委員長は「意見はだいたい出し尽くされた。(結論を)このまま延び延びにするのはおかしい」と説明した。
東日本大震災後、原発の運転停止で地域経済は縮んだ。穴を埋めてきた復興関連需要もほぼ収束。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちを掛けた。5、6月、町観光協会など3団体が早期再稼働を求める陳情を相次いで町議会に提出した。
そのうちの一つ、女川商工事業協同組合には原発関連の物品納入や下請け業務を受注する約90業者が加盟する。原発は関連工事や作業員の食事、宿泊、移動などで加盟業者に多くの取引を生んできた。木村征一理事長(79)は「再稼働しなければ売り上げは戻らない」と危機感を募らせる。
ベテラン町議は「議論はまだ十分でないが、陳情者の思いもくみ取りたい。決着を長引かせるべきではない」と話した。一方で「政治家も学者も住民も賛否が分かれる『国策』の是非を、人口6000人の自治体が判断するのは無理がある」と難しい立場を吐露した。
石巻市議会は再稼働の賛否双方の団体から提出された請願・陳情計2件を審査するため、新石巻市誕生後では初の連合審査会を設置した。総務企画委員会と総合防災対策特別委員会の計12議員がこれまで、国の3機関から意見聴取し、原発を視察した。
「原発は国策だ」。ベテラン議員は国の説明者に念押しし、「避難道の整備も国が前面に出て進めるべきだ」と迫った。一方で、原発の安全性に関しては、複数の委員が「われわれには判断する知見がない」と語り、再稼働自体の是非を問う場面は限られた。
エネルギー政策という国策と、足元の地域が背負うリスク。そのはざまにあっても、地元議会は民意を見極め、結論を導かなければならない。
連合審査会に加わる中堅議員は「国策を前に(地方議会の)限界を感じる部分は確かにある」と明かした上で、「住民に不安があれば、その声を一つ一つ届ける。それが議会に求められた仕事だ」と強調した。
(※)地元同意:国のエネルギー基本計画に基づき、再稼働の事実上の条件とされる。女川原発2号機が新規制基準適合審査に合格したことを受け、梶山弘志経済産業相が2月、村井嘉浩知事に同意を要請した。東北電力は県と女川町、石巻市と締結した安全協定で「原子力施設の新増設や変更の際は立地自治体の了解を得る」と定めた。各自治体の首長は議会の意見を重視して判断する方針を示している。【河北新報】