青森県六ヶ所村にある原発から出る使用済み核燃料の再処理工場について、原子力規制委員会は、審査に合格したことを示す審査書を取りまとめました。国が進める核燃料サイクル政策の要の施設で一つの節目を迎えましたが、取り出したプルトニウムの利用計画は不透明で、操業開始に向けては、課題を抱えています。
再処理工場は原子力発電所で使い終わった核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する国の核燃料サイクル政策の要の施設です。
電力会社などの出資でつくる事業者の日本原燃からの申請を受け、原子力規制委員会は6年余りをかけて福島の原発事故後にできた規制基準に適合しているかどうか審査を行いました。
そして、ことし5月事実上の合格を示す審査書案をまとめ、一般から意見を募るパブリックコメントなどの手続きを進めていました。
29日の会合では、およそ760件の意見が集まったことが報告され、放射性物質の漏えいのリスクなど安全に関する指摘が多かったということです。
これについて規制委員会は放射性物質が漏れないよう注水をするなど、事業者がまとめた対策で対応ができるなどとし規制基準の審査に合格したことを示す審査書を正式に取りまとめました。
日本原燃は来年度上期には残りの工事を終えて完成させ、再来年には本格操業に入りたいとしています。
しかし、再処理工場は27年前の建設開始からトラブルなどで完成が大幅に遅れていて総事業費はおよそ14兆円に膨らんでいるほか、プルトニウムの利用も当初の計画どおりには進んでおらず不透明です。
また、本格操業には地元自治体の了解も必要で、今後、国と事業者にはこうした課題にどうこたえていくかがポイントになります。
「核燃料サイクル政策」とは
国が掲げる「核燃料サイクル政策」とは、原子力発電所で使い終わった核燃料からまだ使うことができるプルトニウムを取り出し、再び核燃料に加工し、発電に使うというものです。
政策の立案は古く、戦後間もない昭和30年代、日本が原子力発電の導入を決定した段階から、国の長期計画の中で、最終的に「核燃料サイクル政策」を完成させると明記していました。
ねらいは石油、石炭などの化石燃料が乏しい日本で、核燃料の原料の「ウラン」をリサイクルすることで、エネルギーを有効利用しようというもので、プルトニウムを「準国産」の資源と位置づけるものでした。
核燃料サイクル政策は2つのリサイクルの輪からなりたっています。
その1つが一般の原発でリサイクルを進める方法です。
その仕組みです。
原発で使い終えた核燃料を再処理工場に運び、プルトニウムを取り出します。そのプルトニウムをウランと混ぜ合わせて「モックス燃料」と呼ばれる特殊な燃料がつくられ、原発で再び使用されることになります。
これをプルサーマル発電と呼びます。
もう一つが高速炉によるリサイクルの方法です。
一般の原発で使い終わった核燃料を再処理工場に運び、同じようにプルトニウムを取り出します。
プルトニウムはウランと混ぜ合わされた高速炉用の特殊なモックス燃料に加工されたあと、高速炉で利用されます。
高速炉やプルサーマル発電では使ったモックス燃料からも再びプルトニウムを取り出し再利用します。
このときには今回の再処理工場とは別の「第二再処理工場」でプルトニウムが取り出されて、また燃料に加工されます。
このように2つのリサイクルの方法でプルトニウムを何度も使うことを想定しています。
これにより、海外からの輸入に頼るウランの節約につながり、理論上、数千年にわたってエネルギーを安定供給できると国の研究機関は説明をしています。
しかし、この2つのリサイクルの輪はまだ完成していません。
高速炉の実用化のめどはまだたっていないうえ「第二再処理工場」と高速炉むけのモックス燃料をつくる工場はまだ構想段階です。
再処理工場とは
再処理工場とは
青森県六ヶ所村の再処理工場は、全国の原子力発電所から出る使用済みの核燃料を化学処理してプルトニウムを取り出す国内で初めての商業用施設です。
プルトニウムを取り出すためには、使用済み核燃料を貯蔵プールで冷却したあと、細かく切断して硝酸で溶かし、ウランなどと分離する必要があります。
そして、プルトニウムとウランから硝酸を取り除いたあと、燃料として使えるようにするため粉末状に加工します。
作業の工程で出る廃液は強い放射能を帯びていることからガラス原料と混ぜ合わせて固めることになっています。
再処理工場は原発よりも放射性物質を扱う工程が多く、敷地内にある建物の数はおよそ30と複雑な構造となっています。
また、核兵器の材料にもなるプルトニウムを扱うことから、厳重なテロ対策が求められ、立ち入りは厳しく制限されています。
工場の建設は平成5年に始まり、当初は平成9年末までに完成する計画でしたが、プールから水漏れが起きるなどトラブルが相次ぎ、建設が始まってから27年たった、いまも完成していません。
この間も各地の原発からは使用済み核燃料が搬入され、4年前には工場内で貯蔵できる限界の3000トン近くに達し、現在、各原発からの受け入れを停止しています。
再処理工場の経緯
再処理工場は原発で使い終わった核燃料を処理してプルトニウムを取り出し再び燃料として使う「核燃料サイクル政策」の要の施設として、27年前の1993年、青森県六ヶ所村で建設が始まりました。
電力各社の出資でつくる事業者の日本原燃は当初、再処理工場が完成する時期を着工から4年後の1997年としていました。
しかし、国の安全審査が長引いた影響で完成が延びていた中、2001年、使用済み核燃料を貯蔵するプールから少量の水が漏れるトラブルが起きるなどして完成時期が延期されます。
ようやく2006年、試験運転が始まりましたが、この試験運転でも高レベルの放射性廃液をガラスと混ぜる工程で不具合が続き、日本原燃は完成時期を繰り返し延期しました。
こうした中、2011年、東日本大震災と、福島第一原発の事故が起きます。
再処理工場には地震や津波による被害はなかったものの、本格操業には原発事故を踏まえて作られた規制基準に適合する必要がありました。
日本原燃は2014年1月に原子力規制委員会に審査を申請、審査では、地震や津波、竜巻といった自然現象に対し、より厳しい想定が求められるようになったほか、大量の放射性物質がタンクから漏れ出すといった重大な事故への対策も新たに求められました。
審査は日本原燃の当初の見通しよりも長期化しました。
そうした中、4年前の2016年には日本原燃が運営する別の関連施設で、品質管理を担当する部署が、社内で定められた評価をせずに事実と異なる報告をしていた問題が明らかになりました。
さらに2017年には非常用発電機のある建屋で雨水の流入が見つかり、長年、必要な点検を怠っていたこともわかり、日本原燃は安全上、重要な施設にある設備をすべて確認するなどの対応を迫られ、この間、およそ8か月にわたって規制委員会の審査は中断されました。
日本原燃は当初平成9年だった完成時期を合計24回にわたって延期し、現時点では「来年度上期」つまり来年4月から9月の間としています。
今後は
今回、規制委員会から審査の合格が出されましたが、今後、本格操業にはまだ必要な手続きや国の検査が控えています。
まず、設備の耐震性など詳しい設計をまとめた膨大な書類のチェックを受けなくてはなりません。
再処理工場は安全上、重要な施設だけも1万点を超える大量の設備を備えていて、その数は通常の原発と比べて10倍以上とされています。
さらに、新たな規制基準に基づく重大事故への対策工事の完了と工事を終えたあとに、規制委員会によって機器が適切に整備されたかを確認する検査を受ける必要もあります。
また、本格操業にあたっては地元自治体の了解をえないといけません。
日本原燃は来年度上期に工場を完成させ、再来年1月に本格操業に入る方針を示しています。
政策の行き詰まり
今後、日本原燃は再処理工場の本格操業を目指すことになりますが、多くの課題があります。
使い終わった核燃料から再処理工場でプルトニウムをとりだしてリサイクルして何度も使うという、国の「核燃料サイクル政策」が行き詰まりを見せているからです。
リサイクルの方法は2つあり、その一つは「高速炉」という特殊な原発を中心にしたものです。
高速炉は発電しながら使った以上のプルトニウムを生み出す能力があるとされ、「夢の原子炉」とも呼ばれ、研究開発が進められてきました。
ところが、福井県敦賀市にある実験段階の施設「もんじゅ」で、トラブルなどが相次ぎ、1兆円以上が投じられながら、ほとんど稼働することなく、4年前に政府が廃炉を決定、国内での開発の足がかりを失いました。
このため、国はフランスで計画されている新型の高速炉の開発に協力し、技術や知見を蓄積するとしていましたが、これも、フランスが去年、建設を当面見送る方針を示したため開発の見通しがたっていません。
高速炉のサイクルの実用化は不透明となっています。
また、もう一つのサイクルの輪、一般の原発でプルトニウムを再利用する方法についても課題があります。
この方法は「プルサーマル発電」と呼ばれ、当初は、2015年度までに全国16基から18基の原発で行う予定でしたが、福島の原発事故後、再稼働できた原発でプルサーマル発電が行われているのは、四国電力の伊方原発3号機関西電力の高浜原発3号機と4号機九州電力の玄界原発3号機の4基にとどまっていて今後、プルサーマルを実施できる原発がどれだけ増えるかは具体的な見通しがたっていません。
また、日本はすでにイギリスとフランスに委託し使用済み核燃料の再処理を行っていて現在、海外に保有するプルトニウム量はおよそ36トン。
プルサーマル発電を行っている4基も海外で取り出したプルトニウムが燃料に使われています。
海外にあるプルトニウムは今後も核燃料に加工され、返送される契約になっていることから、青森県六ヶ所村の再処理工場で取り出したプルトニウムを急いで使う必要がない状況です。
さらに伊方原発と高浜原発では去年以降、プルトニウムをつかった燃料の一部で使い終わったものが発生していますが、これを再処理することができる「第二再処理工場」は、まだ構想段階です。
使い終わった燃料は原発内のプールに保管されたままになっています。
このように核燃料サイクル政策は当初の構想どおりに進んでいません。
政策の完成には巨額の費用
さらに大きな問題があります。
核燃料サイクル政策のふたつのリサイクルの輪を完成させるためにはさらに巨額な費用がかかってくるということです。
再処理工場は27年前に建設が始まったものの、トラブルなどの影響で完成時期をこれまで24回にわたって延期してきました。
福島の原発事故を教訓に新たにつくられた規制基準に基づいて対策が追加で行われたこともあり、青森の再処理工場だけでも建設費は当初の7600億円が、およそ4倍の3兆円前後にまで膨れ上がっています。
さらに本格操業をしたあとの運営費と、40年間とされる運用期間のあとの解体廃止にかかるコストを含めると総事業費はおよそ13兆9400億円という巨額にのぼる見通しです。
費用はこれだけではありません。
プルトニウムを混ぜて一般の原発で再利用するプルサーマル発電の核燃料をつくる製造工場にも、およそ2兆3300億円の総事業費が見積もられています。
さらに、高速炉のリサイクルを完成させるためには、高速炉の実用化、高速炉のための燃料の製造工場、そして高速炉や一般の原発で使い終わった燃料から再びプルトニウムを取り出す「第二再処理工場」の整備が必要になります。
しかし、これらは構想の段階でどれほどの費用がかかるか具体的になっていません。
一部の専門家からは、高速炉によるリサイクルには高速炉が10基程度は必要で、そのほかの施設も考えると、少なくとも合わせて数十兆円規模の巨額な費用が発生するとの指摘しています。
国は再処理の施設の整備に必要な費用を確保するため、4年前には電力会社が継続して費用に充てる拠出金を義務づける法律をつくりました。
この電力会社の拠出金は、電気料金のうち、送電線を利用する料金の「託送料金」の一部からまかなわれるため、最終的に国民の負担につながります。
国際社会からの厳しい目
ほかにも課題があります。
プルトニウムは核兵器の原料ともなることから、日本は利用目的のないプルトニウムを持たないことを国際的に約束しています。
すでに国内外におよそ46トンのプルトニウムを保有していて、具体的にどう消費していくのか国際社会からの懸念にも応えていく必要があります。
政策継続の意義について一方で、サイクル政策では、プルトニウムという資源を有効利用できることから、仮に海外からウランを輸入できなくなった場合に備えられることや、最終的に残る高レベルの放射性廃棄物の量を減らせるとされていることなどから政策を継続するメリットを主張する意見もあります。
政策について議論を
いずれにしても、巨額な費用が必要になる事業であり、日本のエネルギー供給の根本にかかわる政策です。
政策が立案されたのは昭和30年代。その後、経済や社会は劇的に変容しています。
政策を継続するにしても、違う選択肢を選ぶにしても、今一度、政策の長所、短所を整理して、国民的な理解を得るための議論が求められています。
原子力規制委 初代委員長「国民に問いかけを」
再処理工場が審査に合格したことについて、原子力規制委員会の初代の委員長を務めた田中俊一さんは「福島の原発事故の後、新たな規制基準のもと原発の再稼働は簡単ではなく、取り出したプルトニウムを利用する先は見通せていない。こうした状況では、たとえ再処理工場が本格稼働できたとしても、当初から掲げたように大量のプルトニウムを取り出す計画を達成できないのは明らかだ」と批判しています。
そのうえで「原発事故を踏まえて政策をきちんと見直す必要があるが、国や事業者はこの議論から逃げているように見える。この機会に核燃料サイクル全体の在り方を国民に問いかけるプロセスをつくるべきだ」と指摘しています。
NPO 共同代表「事故回避できると言い切れないのでは」
原子力政策に提言を続けているNPO法人・原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「審査書類を見ると、可搬型のポンプ類とか、電源車が機能することを前提に深刻な事故に至らないという結論になっているが、より厳しい自然災害や航空機落下などが起きた際、安全のための設備がきちんと機能するのかチェックが十分ではなく、深刻な事故を回避できると言い切れないのではないか」と話しています。
また、試験運転を行った際に高レベルの放射性廃液をガラスと混ぜる工程で不具合が続いたことを踏まえ、「10年以上、再処理に取り組んでおらず、運転を行っていく技術的な能力にも懸念がある。トラブルに対するマニュアルはあると思うが、構造全体を把握できていないと臨機応変に対応できず、大きな事故に発展してしまうのではないかと危惧している」と話しています。
伴共同代表は「このまま進めるのであれば、日本原燃と原子力規制委員会にはしっかりと情報を公開し、何かトラブルなどがあったときには、しっかりと対応できるようにしてもらいたい」と指摘しています。
原子力委 元委員長代理「第三者機関で政策そのもの評価を」
原子力委員会の元委員長代理で長崎大学の鈴木達治郎教授は「海外の再処理工場に委託するなどして、すでに回収されたプルトニウムは合計でおよそ50トンだが、実際に使用したのはわずか4トンしかない。事実上、消費する見通しもたっていない。再処理工場を要とする国の核燃料サイクルの現状は当初の構想から比べると、まるで実現していない」と指摘しています。
そのうえで「再処理工場にかかる費用は年間3000億円以上、総額で14兆円近く、大規模な事業で、その費用は電気料金に上乗せして消費者が負担するということになっている。原子力政策に基づく事業なので国が説明責任を負っている。推進と反対の立場を越えた第三者機関で政策そのものを評価するべきで独立した機関を設けて、公正な評価を行うことが必要だ」と提言しています。
元経産省官僚 再処理は必要
経済産業省の元官僚で、エネルギー政策に詳しい政策研究大学院大学の根井寿規教授は「再処理をやめた場合、原子力発電はウラン燃料だけで続けていくことになる。日本はエネルギー資源に乏しく、将来にわたって輸入によるウラン燃料を確保し続けられるという保証はないだろう」と述べ、将来の脱炭素化エネルギーの選択肢となる原子力を維持するため、再処理は必要だと指摘しています。
また、根井教授は「再処理をやめたら使用済み核燃料はリサイクルはせずに直接処分するしかなく、一度、直接処分を選んだら再処理という選択肢に戻るのは非常に難しい『不可逆』なものである。仮に再処理をやめた場合に、その後、どのような影響が起こりうるのかという議論が尽くされていないと感じている」と述べています。
一方、原子力の替わりになるエネルギーについては「再生可能エネルギーの割合は伸びてくると思うが、原子力に比べて安定したエネルギーとは言えず、さらに、電気をためる電池にはリチウムやコバルトなどの素材が必要となってくる。今後、電池の需要が何倍にもふくれあがったとき、日本は海外と競争をして、こうした素材を確保できるかも不透明であり、原子力の替わりになるとは言い切れない」としています。
専門家「意義大きいが議論進めるべき」
原子力工学が専門で東京工業大学先導原子力研究所の澤田哲生助教は「エネルギー資源の少ない日本にとって、福島第一原発の事故のあとも原子力が有用な電源であることは間違いなく、再処理工場でプルトニウムを取り出して再利用していくことは非常に意義が大きい」と述べています。
また、原子力の技術開発が進む中国やロシアなど他国との比較に触れ、澤田助教は「日本の原子力の研究開発は近年、衰えをみせており、このままだとかつて優位にあった技術力で海外に追いつかなくなるおそれもある。エネルギー安全保障の観点からも将来、日本は不利になる可能性があり、憂慮される問題だ」として、再処理や高速炉を含め、将来に向けた原子力の研究開発を推し進めることを求めています。
一方で、核燃料サイクル政策の要である再処理で取り出されたプルトニウムは、一般の原発ではなく、高速炉の燃料として繰り返し再利用することが必要だとしたうえで「研究開発用の高速炉だった『もんじゅ』の廃炉もあり、高速炉の具体的な計画が示されていない状況だ。国は、長期的にみて、原子力やサイクル政策をどう具体的に行っていくか議論を進めるべきだ」と指摘しています。
電気事業連合会「核燃料サイクルの進展に向け頑張る」
使用済み核燃料の再処理工場が原子力規制委員会の審査に合格したことについて、大手電力会社で作る電気事業連合会の池辺和弘会長は、NHKのインタビューに対し「審査に長い期間がかかったが、大きな節目だと思うしとても意義深いものだ。今後も審査などの手続きがあるが、事業者の日本原燃を電力会社一体となって応援していく。電力会社は使用済み核燃料を出している責任があるので、核燃料サイクルの進展に向け前向きに頑張っていきたい」と述べました。
青森 三村知事「一層の責任と使命感を持ち不断の努力を」
青森県の三村知事は「再処理工場の基本的設計方針の妥当性が確認されたものと受け止めている」とするコメントを発表しました。
そのうえで、日本原燃に対し「今後も再処理工場のしゅんこうに向け、設計および工事の計画の認可や安全対策工事が控えていることから、これらの対応に万全を期すことはもとより、さらなる安全性の向上に向け一層の責任と使命感を持って不断の努力を続けていただきたい」と注文をつけました。
市民グループが抗議
原子力規制委員会が開かれた東京 港区のビルの前では、市民グループのメンバーらおよそ10人が集まり、再処理工場の審査合格に抗議しました。
メンバーらは「六ヶ所再処理工場申請許可に抗議」などと書かれたビラをかかげ、「再処理工場の許可は不当だ」とか、「核のゴミを増やす再処理はやめろ」などと声を上げていました。
市民グループのメンバーの木村雅英さんは「再処理工場にはたくさんの工程があり、原子力発電所より複雑で、管理が難しく、事故が起こりやすい。また、ちゃんと動いたとしてもプルトニウムが増え、核のゴミを増やしてしまう。核燃料サイクル政策が破綻していることは明らかで、国民を危険にさらして動かしていいはずがない」と話していました。
日本原燃「大きな一歩」
六ヶ所村にある使用済み核燃料の再処理工場が審査に合格したことについて、工場を運営する日本原燃は、「工場のしゅんこう、その後の安全な操業に向けての大きな一歩だ」とのコメントを発表しました。
今後については「審査で約束した安全性向上対策を確実に現場に反映させるとともに、日々、事業の改善に努め、現状に満足することなくより安全な施設を作り上げてまいります」としました。
さらに、地元の住民などに対しては「長年、原子燃料サイクル事業を支えていただいている地域の皆様への感謝の気持ちを忘れることなく、地域と共に発展できるよう安全を最優先に、しゅんこうに向けて全力で取り組んでまいります」としています。
事業主体「燃料サイクルの前進」
使用済み核燃料の再処理工場の事業主体で、運営を日本原燃に委託している「使用済燃料再処理機構」は「関係者の長期にわたる粘り強い努力のたまもので、原子燃料サイクルの確立に向け一歩前進したと受け止めている。日本原燃には、今後とも安全を最優先として地域の皆様のご理解を得つつ、本格的な工事や検査をはじめ、しゅんこうおよび安全・安定操業に向けた取り組みを進められるよう促していく」とコメントしています。
戸田村長「しゅんこうに向けた大きな一歩」
青森県六ヶ所村の戸田衛村長は「再処理工場の基本的設計方針について、妥当性が確認されたものと受け止めている。原子燃料サイクル施設との共存共栄を掲げる村としてはしゅんこうに向けた大きな一歩であると考えている」とするコメントを発表しました。
一方で、戸田村長は「これまで設備のトラブルなどがあった」として、日本原燃に対して、安全確保が何よりも最優先されるという認識を改めて確認するよう求めました。
住民「稼働には絶対に反対」
六ヶ所村で長年、農産物の加工販売会社を経営しながら、再処理工場などに反対してきた菊川慶子さんは「再処理工場はエネルギー政策の要の1つなどと言われているが、プルトニウムの使いみちが不透明な現状において計画はすでに破綻している。原燃ではこれまでもトラブルが相次いでいて安全性に問題があり、稼働には絶対に反対だ」と話していました。
六ヶ所村商工会「稼働への期待高まる」
六ヶ所村商工会の種市治雄会長は「正式な合格は大きな前進であり非常に喜ばしい。原子力関連事業は村にとって固有の産業であり、稼働への期待が高まっている」と述べました。
そのうえで、原子力施設の管理事業などを担う会社も経営している種市会長は「今後は安全対策工事が本格化すると思われるが、村の事業者も日本のエネルギー政策を支えるという自負心を持って、原燃と協力して安全確保に努めていきたい」と話していました。
市民団体代表「中立で公正な審査とはとてもいえない」
青森県内で30年以上にわたって、再処理工場などに反対する活動を続けてきた市民団体の代表で、弁護士の浅石紘爾さんは八戸市内で会見を開き、原子力規制委員会に対して、審査の合格を撤回するよう求める抗議文を提出したことを明らかにしました。
浅石代表は「今回の審査は合格という結論を前提にした審査であり、中立で公正な審査とはとてもいえない。これまで多くのトラブルを起こしてきた再処理工場の、安全性や技術的能力への不安を払拭(ふっしょく)できない」と指摘しました。
さらに「三村知事の国任せな姿勢は県民への説明責任を果たしておらず、国と県はこの機会に改めて再処理工場のリスクについて、地元民にきちんと説明し、県民の声に耳を傾けるよう求めていきたい」と話していました。
原子力規制委 更田委員長「原燃と議論を尽くした」
使用済み核燃料の再処理工場が規制基準に適合しているとして、審査書を取りまとめたことについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は「再処理の審査には初期から参加していたが、福島の原発事故に基づいた規制基準のもとで、経験のない中、再処理工場で何を規制の対象にするべきか共通の理解を作るのに時間がかかった」と振り返りました。
そのうえで「再処理工場は原子炉などに放射性物質が集中している通常の原発とは違って配管などを流れて広がっている特徴がある。どう審査すべきか、規制委員会と再処理工場を運営する日本原燃と議論を尽くした結果だと思う」と述べました。【NHK】