福島第一原発のタンクにたまり続けているトリチウムなど放射性物質を含む水の処分をめぐっては、ことし2月、国の小委員会が基準以下に薄めて海か大気中に放出する方法が現実的だとする報告書をまとめ、政府は地元や関係団体などから意見を聞いたうえで最終決定するとしています。
30日は3団体が参加して4回目の会が東京で開かれ、このうち、全国消費者団体連絡会は「処理水については、まだ多くの国民に知られていない」などと述べ、国民の理解が進むまでは、取り扱いの方向を決めるべきでないという考えを示しました。
また、全国商工会連合会は「保管する現状を維持できるならしてほしいが、処理が必要ならば政府と東京電力の責任で実施すべき」と述べ、その際は十分な説明と第三者による監視体制が必要だとしました。
中小の小売りなどでつくる日本ボランタリーチェーン協会は「安全であるならば流せばいいというのが率直な考えだ」などと述べ、海外の処理事例などを分かりやすく説明し、納得してもらう必要があると指摘しました。
トリチウム水の処分方法をめぐっては、このほか、漁協の全国団体の全漁連・全国漁業協同組合連合会が今月、「海洋放出に断固反対する」との特別決議をまとめています。
経済産業省は、引き続き意見を聞く会の開催を実施するとしています。
全国消費者団体連絡会の浦郷由季事務局長は「処理水についてはまだ多くの国民に知られていないのが現状。また情報が伝わったとしても国や東京電力を信用できなければ理解は進まない。取り扱いの方向は理解が進むまで決めるべきでない」と訴えました。
さらに、「海洋か大気かの2択になっていて、これ以外の方法がきちんと検討されたか疑問だ。大型タンクでの貯蔵やモルタルで固める案なども再度検討すべき。風評被害が起きるのは、消費者だけではなく、仲卸や流通業者の問題でもある。こうした関係者を含めリスクコミュニケーションを丁寧に行う必要がある」と指摘しました。
全国商工会連合会の苧野恭成事務局長は「放出をすると小規模事業者がさらに苦境に陥る懸念があり、現状維持ができるならばしてほしい。ただし、何らかの処理が必要であるならば政府と東京電力の責任で国民や国際社会に対して説明を尽くしたうえで第三者機関の監視体制のもと処理を実施すべきだ」と述べました。
また、政府と東京電力の情報発信について、「これまで以上に情報発信を強化して、可能なかぎり、国民の支持を得られるように全力を注いでほしい」と訴えました。
中小の小売りの事業者などでつくる日本ボランタリーチェーン協会の、中津伸一常務理事は「大気でも海水でも安全であれば流せばいいというのが率直な考えで、もったいぶっているから疑念を持たれるのが事実だと思う。ただ、当事者がいくら訴えても信頼性が薄いので、世界の外部機関の見解や、海外の原子力施設での処理の事例などをわかりやすく国民に説明し、納得してもらうのがいちばんだ」と述べました。【NHK】