関西電力は20日、元大阪市長の橋下徹氏を社外取締役候補として受け入れない方針を固めた。橋下氏をめぐっては筆頭株主の大阪市が候補に推薦していたが、大阪維新の会創設者で政党色が強く、特定株主だけからの要請に応じることは難しいと判断したとみられる。
関係者によると、「人事・報酬等諮問委員会」(森本孝社長と社外取締役4人で構成)がこの日開かれ、橋下氏の受け入れに反対する意見が大勢だったという。関電は橋下氏を含まない役員選任案を28日の取締役会で承認後、定時株主総会に提出する予定だ。
選任案の新たな社外取締役には、元経営者や元大学教授の男性2人と、企業経験のある女性の計3人が、名を連ねる見込みという。
関電役員らの金品受領問題を調べた第三者委員会は、「(関電には)ユーザー目線が欠け、内向きな体質」があったと指摘。森本社長は社外取締役について、「ユーザーの目線も持って我々の業務を監督し、厳しく見られる人がふさわしい」と説明していた。
一方、関電が金品受領問題を社内調査した2018年に監査役を務め、今も役員として残る十市勉・日本エネルギー経済研究所参与や大坪文雄・元パナソニック社長ら5人は退任する。調査結果を非公表とした経営陣の判断を追認した責任を問う声があがっていた。
関電は金品受領問題の再発防止策でガバナンス(企業統治)改革を打ち出し、現時点で6月に予定する定時株主総会での役員交代にあわせ、社外取締役の権限を強める方針だ。
現在の取締役会は9人のうち社内が過半数で森本社長ら5人、社外が近鉄グループホールディングスの小林哲也会長ら4人。これまでは取締役会のメンバーで経営方針を決定し、監査役会(社内3人、社外4人)が監視してきたが、より社外取締役の役割が大きくなる「指名委員会等設置会社」に移る予定だ。
新体制では会社の業務は「執行役」に委ね、それと切り離した取締役会の中に三つの委員会を設け、執行役らの人事や報酬を決め、業務の監査もする。各委員会は過半数を社外取締役にして外部の目線を強める。
新たな取締役会長には、前経団連会長で東レ元会長の榊原定征氏が就任する見通し。ガバナンスを強化し、金品受領問題で失った信頼の回復に取り組むには、新経営陣の高い規範意識が重要となりそうだ。(橋本拓樹、西尾邦明)
関西電力の経営体制はこう変わる
【現在の体制】
《取締役会9人》
社内5人=※森本孝(社長)、※弥園豊一、※稲田浩二、松村孝夫(以上、副社長)、※島本恭次(常務)
社外4人=※井上礼之(ダイキン工業会長)、※沖原隆宗(元三菱UFJフィナンシャル・グループ会長)、※小林哲也(近鉄グループホールディングス会長)、※槇村久子(元京都女子大教授)
《監査役会7人》
社内3人=※八嶋康博、※樋口幸茂、※杉本康
社外4人=※十市勉(日本エネルギー経済研究所参与)、佐々木茂夫(元大阪高検検事長)、※大坪文雄(元パナソニック社長)、加賀有津子(大阪大大学院教授)
【6月以降の新体制】
「指名委員会等設置会社」に移行予定
・取締役会の人数は定めず
・業務執行は取締役会とは切り離した「執行役」に委ねる
・取締役会の中に指名、報酬、監査の三つの委員会をつくる
・各委員会の委員の過半数を社外取締役にする
敬称略、※は2018年に金品受領問題で社内調査をした当時、取締役か監査役に在籍
【朝日新聞】