原子力発電所がある福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(死去)から役員らが金品を受け取った問題を調査していた第三者委は14日、関電に調査報告書を提出した。元助役の関係する企業に関電関連の工事を発注させる目的だったと認定したほか、ガバナンス強化のため会長に外部人材を招くよう提言した。
外部会長の必要性は社内外で指摘されており、報告書を受け取る前から関電は水面下で複数の人物に打診していたもよう。榊原氏は東レの社長や会長を歴任し、14~18年に経団連会長を務めた。連結売上高3兆円超の電力大手のトップとして経歴は申し分ない。改革姿勢をアピールしたい関電にとってうってつけの人物だった。
ただ、榊原氏が会長として陣頭指揮をとったとしても、改革は簡単には進みそうにない。金品受領問題の早期発覚・解決を阻んだ「内向き体質」が立ちはだかる。関電が森山氏と接近したのは同氏の助役時代の1980年代。そこから30年以上も関係を断ち切れなかった。18年にまとめた金品受領問題の社内調査は取締役会にすら報告されることなく処理された。社内に染みついた意識を変えるのは容易ではない。
巨大な専門家集団である電力会社のコントロールは難しい。社員は約2万人おり、発電や送配電、土木、営業など多くの部門を抱える。金品受領問題の中心となった原子力事業本部は、美浜原発(福井県美浜町)での作業員死亡事故を受けて05年に同町へ移り、大阪市の本店のチェックが利きにくくなった側面もあった。
企業統治に詳しい近畿大学の芳沢輝泰准教授は「実績のある榊原氏も電力の専門家ではないため『お飾り経営者』になる可能性もある。また、企業風土はそう簡単に変わらない。反発覚悟で改革を進める必要がある」と指摘する。
関電は6月末をめどに再発防止の具体策をまとめる。信頼回復のためにはトップを招くだけでなく、関電社員もまた変わろうとする覚悟が問われている。【日本経済新聞】