関西電力の金品受領問題は、日本のエネルギー政策にも影響を及ぼす。関電は、東京電力の2011年の福島第1原子力発電所の事故で安全基準が厳しくなった以降の再稼働で先行してきた。今回の不祥事は原発に対する立地自治体の不信を高めており、再稼働をさらに遅らせかねない。
原発は稼働していた54基すべてが11年に停止された。このうち再稼働したのは9基で、関電は高浜原発(福井県)など4基を再稼働させてきた。東京電力ホールディングスが稼働する原発はゼロ基で、関電が再稼働のけん引役になっていた。
新規制に基づく安全審査に合格したのは16基で、14日時点では7基が地元自治体の同意がとれないなどの理由で再稼働に至っていない。高浜原発をめぐる不適切な資金の流れは、自治体からの同意を一段と難しくする恐れがある。
今後、テロ対策施設の建設遅れで九州電力の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機と、関電の高浜原発3、4号機が相次いで止まる見通しだ。廃炉が決まった原発も20基を超えた。
政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、電源に占める比率を30年に20~22%にする目標を掲げる。達成には約30基の再稼働が必要だが、原発への逆風が止まる気配はない。
原発に代わって主力電源となってきた石炭火力への風当たりも強まっている。石炭は安価で安定的に調達できるが、温暖化ガスの排出量が多い。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」のもとで温暖化ガス削減の議論が進むなかで、日本の石炭依存度に対する海外の視線も厳しい。
経済産業省は再生可能エネルギーを主力電源に育てる環境づくりを急いでいる。ただ天候に左右されるなど安定さに欠ける分、移行期は原発や化石燃料などのバックアップ電源が不可欠だ。
キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志氏は「原発は温暖化対策の現実的な選択肢」としたうえで「政府があいまいにしてきた原発の新増設や再稼働に関する議論を正面からする必要がある」と指摘する。
【日本経済新聞】