関西電力の金品受領問題を再調査している第三者委員会(委員長=但木敬一元検事総長)が、福井県高浜町の元助役(死去)から70人超が金品を受け取り、総額で計約3億5千万円相当に上るとの調査結果をまとめたことが12日、関係者の話で分かった。受領者は原子力部門が中心で、関電の社内調査で判明した役員ら20人以外にも不適切な関係が広がっていたことが浮き彫りになった。
第三者委は14日、調査結果を盛り込んだ最終報告書を関電に提出。その後、但木委員長らが大阪市内で記者会見を開いて詳細を説明する。
関電が2018年9月にまとめた社内調査報告書によると、役員ら20人が06~18年、元助役の森山栄治氏から計約3億2千万円相当の金品を受け取った。現金のほか、金貨や商品券、スーツ仕立券なども含まれ、豊松秀己元副社長と鈴木聡元常務執行役員はそれぞれ総額が1億円超に上った。
問題発覚後の19年10月に発足した第三者委員会は、200人以上から聞き取り調査し、原子力事業本部の社員ら約600人から書面で回答を得た。関電OB向けのホットラインを設置して情報提供を求めたほか、消去されたメールなどを復元するデジタルフォレンジック(電子鑑識)の技術も駆使して情報収集した。
関係者によると、調査の結果、原子力事業部門の社員やOBらを中心に新たに約50人が儀礼の範囲を超える金品を受領していたことが判明。総額は、関電が社内調査で認めた額より約3千万円膨らんだ。
第三者委は、森山氏から受け取った金品の管理を個人任せにし、組織としての対応を放置するなど歴代の経営陣によるチェック機能がきちんと働いてこなかった点を問題視。報告書で関電のガバナンス(企業統治)の欠如を厳しく指摘し、改善策として、会長に外部人材を起用することを提言する見通しだ。
関電の会長ポストを巡っては、八木誠前会長が金品受領問題を受けて19年10月に辞任し、現在は空席となっている。岩根茂樹社長も14日に第三者委から報告書を受け取った後、速やかに退任する意向を示しており、人事・報酬等諮問委員会と臨時取締役会を開いて新社長を決める予定だ。【日本経済新聞】